ドローン資格と導入に使える補助金・助成金まとめ

ドローン資格と導入に使える補助金・助成金まとめ

この記事の結論
・ドローン導入や資格取得のコストは、国の「補助金」や「助成金」を活用することで大幅に軽減できる可能性があります。

・従業員の育成には「人材開発支援助成金」、機体導入や事業拡大には「ものづくり補助金」などが有力な選択肢です。

・原則として費用は「後払い」であり、交付決定前の発注は対象外となるなど、制度ごとのルールを事前に把握することが重要です。

ドローンのビジネス活用が進む中、資格取得や機体導入にかかる費用の負担は決して小さくありません。

「ドローンを事業に導入したいが、初期投資を抑えたい」「従業員に資格を取らせたいが、講習費用が高い」といった悩みを抱える事業者や個人事業主の方は多いのではないでしょうか。

実は、国や自治体が提供する「補助金」や「助成金」をうまく活用することで、これらの費用を大幅に軽減できる可能性があります。

しかし、制度は多岐にわたり、要件も複雑であるため、どれを選べばよいか迷ってしまうことも少なくありません。

本記事では、ドローンの資格取得や事業導入に利用できる補助金・助成金の全体像を分かりやすく解説します。

制度の違いや具体的な選び方、申請のポイントまでを網羅し、安心してテクノロジーを活用するための第一歩をサポートします。

目次

ドローン資格・導入に使える補助金・助成金の基本

ドローン関連の費用を抑えるために利用できる制度には、大きく分けて「補助金」と「助成金」の2種類があります。

まずはそれぞれの特徴と、どのような費用が対象になるのか、基本的な仕組みを理解しましょう。

そもそも「補助金」と「助成金」は何が違う?

一般的に「補助金」と「助成金」は混同されがちですが、管轄や受給の仕組みに傾向の違いがあります。

これらに厳密な法的定義の違いが明記されているわけではありませんが、一般論として以下のような傾向があります。

  • 補助金(主に経済産業省・中小企業庁管轄)
    事業の拡大や設備投資を支援する目的で設けられています。予算に上限があり、申請しても必ず受給できるわけではなく、審査(コンペ形式)を経て採択される必要があります。
  • 助成金(主に厚生労働省管轄)
    雇用維持や人材育成、職場環境の改善を目的としています。要件を満たしていれば受給できる可能性が高く、通年で申請を受け付けているものが多いのが特徴です。

補助金は「採択率」があるコンペ形式、助成金は「要件」を満たす形式と覚えておきましょう。

ドローン関連で活用できる主な制度の種類

ドローン活用において検討すべき制度は、大きく以下の3つのカテゴリーに分類できます。

  • 人材育成・資格取得支援
    従業員にドローンスクールを受講させる際の費用や、訓練期間中の賃金を助成する制度です。主に厚生労働省の「人材開発支援助成金」が該当します。
  • 設備投資・販路開拓支援
    ドローン機体の購入や、ドローンを活用した新サービスの開発、宣伝広告費などを補助する制度です。「小規模事業者持続化補助金」や「ものづくり補助金」などが代表的です。
  • ITツール導入支援
    ドローンで撮影したデータを解析するソフトウェアや、運行管理システムの導入を支援する「IT導入補助金」などがあります。

ドローン関連で補助金・助成金が適用される費用とは?

制度によって対象となる経費(補助対象経費)は異なりますが、一般的に以下のような費用が認められるケースがあります。

  • 講習費用・受講料:ドローンスクールへの入学金や受講料、教科書代など。
  • 機体購入費:ドローン本体やカメラなどのハードウェア費用(※汎用性が高いパソコンやタブレットは対象外となることが多いです)。
  • ソフトウェア費:測量用ソフトや画像解析ソフトなどの購入・利用料。
  • 外注費・開発費:ドローンを活用したシステム開発や、Webサイト制作費など。
  • 訓練期間中の賃金:従業員が講習を受けている時間の給与の一部(助成金の場合)。

ドローン資格取得費用に「人材開発支援助成金」を活用

ドローンの操縦技術を従業員に習得させたい場合、最も有力な選択肢となるのが厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。

この制度は、労働者の職業能力開発を支援する事業主に対して助成を行うものです。

人材開発支援助成金とは?概要と対象者

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者(雇用保険被保険者)に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練を行った場合に適用されます。

訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成してくれる非常に有用な制度です。

主な対象者(申請者)

  • 雇用保険適用事業所の事業主(法人または個人事業主)
  • 従業員に訓練を受けさせること

事業主自身(社長や役員、一人親方など)が受講する場合は対象外となるため注意が必要です。また、公務員も対象外となります。

特定訓練コースと一般訓練コースの違い

この助成金にはいくつかのコースがありますが、ドローン講習で主に関連するのは「特定訓練コース」と「一般訓練コース」です。

  • 特定訓練コース
    労働生産性の向上に資する訓練や、若年者への訓練など、効果が高いと認められる特定の訓練が対象です。助成率が高く設定されています。
    (例:経費助成率45%、賃金助成1人1時間あたり760円など ※中小企業の場合)
  • 一般訓練コース
    特定訓練コース以外の職務に関連した訓練が対象です。
    (例:経費助成率30%、賃金助成1人1時間あたり380円など ※中小企業の場合)

※助成率や助成額は、賃金要件や生産性要件を満たす場合に加算されることがあります。正確な数値は最新の公募要領を確認してください。

ドローン国家資格(一等・二等)は助成金の対象?

2022年12月から開始されたドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)取得のための講習は、業務に関連する訓練であれば助成金の対象となり得ます。

登録講習機関(ドローンスクール)が実施する「一等資格」や「二等資格」の講習コースは、実務に直結する技能訓練として認められるケースが多いです。

ただし、訓練時間数(例えば10時間以上など)の要件を満たす必要があります。

民間資格は助成金の対象になる?適用条件を解説

国家資格だけでなく、民間資格(JUIDAやDPAなど)の取得コースであっても、以下の条件を満たせば対象になる可能性があります。

  • 業務に関連していること:その資格が現在の業務や今後の事業展開に必要であること。
  • OFF-JT(職場外訓練)であること:通常の業務を離れて実施される訓練であること。
  • 訓練時間数の要件:制度で定められた最低時間数(例:10時間以上など)を満たしていること。

具体的なカリキュラムが対象になるかは、受講予定のスクールや管轄の労働局へ事前に確認しましょう。

ドローン導入・事業拡大に役立つ主要補助金制度

資格取得だけでなく、ドローン機体の購入や事業への本格導入を目指す場合は、経済産業省系の補助金が適しています。ここでは代表的な4つの制度を紹介します。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者(従業員数が少ない会社や個人事業主)が、販路開拓や生産性向上のために行う取り組みを支援する制度です。

ドローンを活用した空撮サービスの宣伝チラシ作成や、Webサイト制作と合わせたドローン機体の購入などに活用できます。

比較的申請しやすく、ドローン導入の第一歩として利用されることが多い制度です。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者が自社の課題解決のためにITツールを導入する経費の一部を補助する制度です。

ドローンで撮影した画像を解析するクラウドソフトの導入や、点検業務の自動化システムの導入などが該当します。

単なるハードウェア(ドローン本体)のみの購入は対象外となる場合が多く、ソフトウェアやサービスとのセット導入が基本となります。

ものづくり補助金

中小企業が革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する制度です。

ドローン本体や関連ソフトウェアが「機械装置・システム構築費」として対象になりやすく、本格的な産業用ドローンの導入やシステム構築を目指す場合に最適です。

事業再構築補助金

経済環境の変化に対応し、新分野展開や業態転換を行う事業者を支援する大型の補助金です。

建設業者がドローン測量事業へ新規参入する場合や、イベント会社がドローンショー事業を始める場合などに活用されます。

思い切った事業転換が必要なため、事業計画の策定には高い精度が求められます。

【その他】地方自治体独自のドローン関連補助金

国の制度以外にも、各都道府県や市町村が独自にドローン導入を支援している場合があります。

農業用ドローンの導入補助(スマート農業支援)や、鳥獣被害対策のためのドローン導入補助などが一例です。

地域や時期によって募集状況が異なるため、自治体の商工会議所やWebサイトで最新情報を確認しましょう。

【目的別】ドローン補助金・助成金の選び方と申請戦略

多数ある制度の中から、自社に最適なものを選ぶための視点と、申請に向けた戦略を解説します。

あなたに最適な制度は?活用目的・規模で診断

目的と事業規模に合わせて、以下のように検討するとスムーズです。

  • 「従業員の資格取得」がメインの場合
    人材開発支援助成金が第一候補です。確実に要件を満たせば受給できる可能性が高いためです。
  • 「小規模な販路拡大・機体購入」がメインの場合
    小規模事業者持続化補助金。チラシやHP作成などと組み合わせて申請しやすいのが特徴です。
  • 「本格的な設備投資・新サービス開発」の場合
    ものづくり補助金。高額な産業用ドローンやシステム構築が必要な場合に適しています。
  • 「全く新しい分野への進出」の場合
    事業再構築補助金。事業の軸足を移すような大きな転換を行う場合に検討します。

複数の補助金・助成金は併用できる?ルールと注意点

基本的に、「同一の事業・同一の経費」に対して、複数の国庫補助金を重複して受給することはできません

例えば、「Aというドローンの購入費」に対して、ものづくり補助金と小規模事業者持続化補助金の両方を受け取ることは不可です。

ただし、「資格取得は人材開発支援助成金」、「機体購入はものづくり補助金」というように、対象となる経費や事業目的が明確に分かれていれば、併用(使い分け)が可能な場合があります。

制度ごとの申請難易度と採択されやすいポイント

公式な採択率データは変動しますが、一般的な傾向は以下の通りです。

  • 人材開発支援助成金:難易度は「中」。計画届の提出期限や書類の整合性が厳格に求められますが、要件を満たせば受給できます。
  • 小規模事業者持続化補助金:難易度は「中」。事業計画書で「販路開拓の具体策」をしっかりアピールする必要があります。
  • ものづくり補助金・事業再構築補助金:難易度は「高」。革新性や市場優位性を示す高度な事業計画書が必要となり、専門家の支援を受けるケースが多いです。

申請準備から受給までの一般的な流れと必要書類

補助金・助成金は、申請してすぐにお金がもらえるわけではありません。一般的なフローは以下の通りです。

  1. 計画作成・申請:事業計画書や申請書類を作成し、提出します(電子申請が主流)。
  2. 審査・採択(交付決定):審査を通過すると「交付決定通知」が届きます。
  3. 事業実施:実際にドローンスクールに通ったり、機体を購入したりします(※原則、交付決定後の契約・発注が必要です)。
  4. 実績報告:領収書や成果物を添えて報告します。
  5. 確定検査・受給:報告内容が認められると、補助金・助成金が振り込まれます。

必要書類には事業計画書のほか、登記簿謄本や決算書、見積書などが含まれます。

ドローン補助金・助成金活用の注意点と成功への秘訣

補助金活用にはメリットだけでなく、リスクや負担も伴います。失敗しないための注意点を確認しておきましょう。

申請前の確認事項と申請後のリスク

まず、補助金は原則「後払い」であることを理解しておく必要があります。費用は一度全額自己負担する必要があるため、資金繰りに問題がないか事前に確認しましょう。

また、多くの補助金では、交付決定通知が届く前に契約や発注を行うと対象外になります(事前着手届出が認められる例外を除く)。

受給後も数年間にわたり状況報告が求められる場合があり、目的外の使用や不正が発覚した場合は返還を求められるリスクもあります。

採択率を上げる事業計画書作成のコツ

審査員に「この事業には税金を投入する価値がある」と思わせる必要があります。

「ドローンを導入して頑張る」といった抽象的な内容ではなく、「ドローン導入により作業時間を〇〇時間短縮し、売上を〇〇%向上させる」といった数値目標を盛り込むことが重要です。

なぜ今ドローンが必要なのか、自社の強みとどう掛け合わせるのかを論理的に説明するストーリー性も求められます。

申請サポート専門家(社労士・行政書士)の活用メリット

申請書類の作成は専門知識が必要で、手間もかかります。

助成金(人材開発支援助成金など)の申請代行が可能な「社会保険労務士(社労士)」や、補助金の事業計画作成を支援する「行政書士」「中小企業診断士」などの専門家を活用するのも一つの手です。

報酬はかかりますが、書類不備のリスクを減らし、採択率を高めるノウハウを提供してもらえるため、確実性を高めるためには有効な選択肢です。

専門家に依頼する場合は、ドローン関連の申請実績があるかどうかを確認すると安心です。

まとめ

ドローンの資格取得や事業導入には、国や自治体の補助金・助成金が大きな助けとなります。

  • 従業員の育成なら「人材開発支援助成金」
  • 販路開拓・機体導入なら「小規模事業者持続化補助金」や「ものづくり補助金」

まずは自社の目的を明確にし、該当する制度の最新の公募要領を確認することから始めましょう。

制度は複雑ですが、正しく活用すれば、コストを抑えながらドローンという新たなテクノロジーを事業の武器にすることができます。

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