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ドローン飛行ルール【プロ解説】航空法〜申請・安全運航

この記事の結論
・2022年の法改正により100g以上の機体が航空法の規制対象となり登録が義務化
・DID地区や夜間などの特定飛行を行う際はDIPSでの事前許可・承認申請が必須
・航空法順守に加え、風速や電波距離などの安全基準を理解することが事故防止に直結

ビジネスにおける空撮や点検、あるいは趣味の撮影など、ドローンの活用シーンは急速に拡大しています。

しかし、ドローンを飛ばすためには複雑な航空法や関連法規を正しく理解しなければなりません。

「知らなかった」では済まされない重い罰則が存在するだけでなく、墜落事故による損害リスクも伴います。

本記事では、ドローンを安全かつ合法的に飛行させるために必須となる「航空法の基本ルール」から、国土交通大臣への許可・承認が必要な「特定飛行」の条件、さらには現場レベルで重要となる「風速」「電波距離」といった実践的な安全運航ノウハウまでを網羅的に解説します。

法令遵守はもちろんのこと、操縦士としての実務視点に基づいた判断基準を身につけ、リスクを最小限に抑えた運用を目指しましょう。

目次

ドローンを飛ばす前に知るべき「基本のキ」〜航空法の全体像〜

ドローンを飛行させる際、最も基本となるのが「航空法」による規制です。

まずは、どのような機体が規制対象となり、どこで飛ばしてはいけないのか、全体像を把握しましょう。

無人航空機とは?200g(100g)基準と法律の対象範囲

航空法において規制対象となる「無人航空機」とは、人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機(ヘリコプターやマルチコプターなど)、滑空機、飛行船であって、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものを指します。

ここで重要となるのが重量の基準です。

かつては200g以上が対象でしたが、法改正により2022年6月20日から「100g以上」の機体が航空法の規制対象(無人航空機)となりました。

  • 100g以上の機体:航空法の規制対象。機体登録義務およびリモートID機器の搭載義務があります。
  • 100g未満の機体(トイドローン等):航空法の「無人航空機」には該当しませんが、「模型航空機」として扱われ、空港周辺や一定の高度以上での飛行は規制されます。

この「100g」には、バッテリーを含んだ重量が含まれます(取り外し可能なプロペラガードなどは含まないケースが一般的ですが、メーカー仕様を確認してください)。

まずはご自身の機体が100g以上かどうかを確認することが第一歩です。

引用元:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html

重量100gにはバッテリーが含まれるため、購入前に必ず総重量スペックを確認しましょう。

「飛ばしてはいけない場所」飛行禁止空域を理解する

航空法では、事故が発生した際の影響が大きい場所や、有人航空機の安全を確保する必要がある場所を「飛行禁止空域」として定めています。

これらの場所で飛行させるには、原則として国土交通大臣の許可が必要です。

  1. 空港等の周辺の空域
    空港やヘリポートの周辺は、航空機の離着陸の安全確保のため飛行が禁止されています。進入表面等の制限表面が設定されており、空港から離れていても高さ制限がかかる場合があります。
  2. 地表または水面から150m以上の高さの空域
    ドローン 高度の制限として、地上または水面から150m以上の高さは飛行禁止です。これは有人航空機との衝突を避けるためです。
  3. 人口集中地区(DID)の上空
    国勢調査の結果に基づき設定される人口密度が高いエリアです。たとえ私有地であっても、DID地区内であれば屋外での飛行は原則禁止となります。

これらの空域は、国土地理院が提供する地図や、専用のアプリで事前に必ず確認してください。

引用元:国土地理院地図(人口集中地区)

「守るべき飛行方法」特定飛行の基本ルール

飛行禁止空域以外で飛ばす場合でも、無条件に自由に飛ばせるわけではありません。

国土交通大臣の許可・承認がなくても遵守しなければならない「遵守事項」と「飛行方法」があります。

【すべての飛行で遵守すべき事項(一部抜粋)】

  • アルコール・薬物の影響下で飛行させないこと
  • 飛行前点検を行うこと
  • 衝突予防を行うこと

【許可・承認なしで飛行する場合のルール】

以下のルールから外れる場合は、後述する「特定飛行」となり、承認が必要です。

  1. 日中(日の出から日没まで)に飛行させること
  2. 目視範囲内(直接肉眼)で飛行させること
  3. 人(第三者)または物件(第三者の建物・車など)との間に30m以上の距離を保つこと
  4. 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
  5. 危険物を輸送しないこと
  6. 物件を投下しないこと

特に「人・物件との30m距離」は、ドローン 距離に関する規制として非常に重要です。

自分や関係者以外の「第三者」や「第三者の物件」からは常に30m以上離す必要があります。

引用元:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html

国土交通大臣の許可・承認が必要な「特定飛行」と申請の概要

前述の禁止空域での飛行や、基本的な飛行ルールを超えて飛行させる場合を「特定飛行」と呼びます。

業務でドローンを使用する場合、多くのケースでこの特定飛行に該当するため、事前の許可・承認申請が必須となります。

特定飛行とは?具体的な9つの飛行方法

特定飛行には、主に以下のパターンがあります。これらに該当する場合は、必ず手続きを行わなければなりません。

  1. 空港等周辺での飛行(許可が必要)
  2. 150m以上の上空での飛行(許可が必要)
  3. 人口集中地区(DID)上空での飛行(許可が必要)
  4. 夜間飛行(承認が必要)
    日没後から日の出前までの飛行。
  5. 目視外飛行(承認が必要)
    モニターを見ながらの操縦(FPV)や、建物の裏側など直接肉眼で見えない場所への飛行。
  6. 人または物件から30m未満での飛行(承認が必要)
    第三者や第三者の物件に接近して飛行させる場合。
  7. イベント上空での飛行(承認が必要)
    催し場所の上空での飛行。リスクが高いため審査が厳格です。
  8. 危険物輸送(承認が必要)
    農薬散布などが該当します。
  9. 物件投下(承認が必要)
    農薬散布や、荷物の切り離しなどが該当します。

引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001402263.pdf

飛行禁止空域での飛行や特定飛行を行う場合の許可・承認の条件

特定飛行を行うためには、安全性確保のための体制(機体の機能、操縦者の技能、安全管理体制)が基準を満たしている必要があります。これを「飛行カテゴリー」と呼びます。

  • カテゴリーI:特定飛行に該当しない飛行(許可・承認不要)。
  • カテゴリーII:特定飛行のうち、立入管理措置(第三者が入れない措置)を講じた上で行う飛行(許可・承認が必要)。
  • カテゴリーIII:特定飛行のうち、立入管理措置を講じないで行う飛行(有人地帯での目視外飛行など)。非常に厳格な「第一種機体認証」と「一等操縦士資格」が必要。

業務でよくある「DID地区での空撮」や「30m未満の点検」は、一般的にカテゴリーII飛行として申請を行います。

ここで、ドローン 高度が150mを超える場合や、ドローン 距離が確保できない環境下での飛行については、補助者の配置や飛行範囲の明示など、追加の安全対策が条件として求められます。

引用元:https://www.mlit.go.jp/koku/level4/

DIPS(ドローン情報基盤システム)による申請手続きの全体像

許可・承認申請は、国土交通省が運営するオンラインシステム「DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム)」で行います。

【申請の基本的な流れ】

  1. アカウント開設:DIPSで個人または法人のアカウントを作成。
  2. 機体情報・操縦者情報の登録:使用するドローンと操縦者を登録。
  3. 申請書の作成:飛行の目的、日時、経路、方法、安全対策などを入力。
  4. 提出・審査:国土交通省(航空局)へオンライン提出。
  5. 許可書の発行:審査が通れば電子許可書が発行される。

申請は飛行開始の10開庁日前までに行う必要があるため、2週間以上の余裕を持ちましょう。

多くの業務ユーザーは、場所や日時を特定しない「包括申請」(1年間有効)を利用しています。

引用元:https://www.dips.mlit.go.jp/

競合が語らない!安全飛行のための「風速」「電波距離」の重要ポイント

航空法を守っていれば絶対に安全かというと、そうではありません。

現場で事故を防ぐために最も重要なのは、自然環境や通信環境への対応です。

ここでは、法律には明記されていないものの、実務上極めて重要な「風速」と「電波距離」について解説します。

ドローン飛行における「風速」の具体的な基準と判断

ドローン 風速の関係は密接です。

多くのドローンメーカーは機体ごとに「最大風圧抵抗(耐風性能)」を公表していますが、これはあくまで「耐えられる限界」に近い数値です。

【安全飛行のための判断基準】

  • 風速5m/s以上:多くのプロパイロットが飛行中止を検討するラインです。機体が流されやすくなり、バッテリー消費も激しくなります。
  • 風速10m/s以上:一般的なドローンでは制御不能になるリスクが高く、飛行させるべきではありません。

【注意すべきポイント】

地上の風速と上空の風速は異なります。地上が穏やかでも、高度100m以上の上空では強風が吹いていることがよくあります。

地上での計測だけでなく、アプリで上空の風速予測を確認し、機体の挙動に注意を払いましょう。

安全な「電波距離」とは?電波法と電波干渉の回避策

ドローンのカタログには「伝送距離 最大◯km」と記載されていますが、これは障害物がなく電波干渉がない理想的な環境での数値です。

都市部や住宅地では、Wi-Fiなどの電波が飛び交っており、実際のドローン 電波距離は大幅に短くなります。

【電波法と技適マーク】

日本国内でドローンを使用する場合、電波法に基づく「技術基準適合証明(技適マーク)」が付いた機体・プロポを使用しなければなりません。海外並行輸入品などで技適がないものを使用すると電波法違反になります。

【電波トラブル回避策】

  • 2.4GHz帯の特性:多くのドローンで使用される2.4GHz帯は、直進性が強く、障害物に弱い性質があります。建物や木々の影に入ると映像が途切れることがあります。
  • 干渉対策:アンテナの向きを適切に調整する(アンテナの側面を機体に向ける)、離陸場所を高くする、見通しの良い場所を確保するなどが有効です。

悪条件での飛行判断とトラブル防止策:プロの視点

強風時や電波状況が悪い場所での判断こそ、操縦者の腕の見せ所です。

  • RTH(リターントゥホーム)設定の確認
    電波が途切れた際に自動で戻ってくるRTH機能ですが、帰還時の高度設定が低いと、戻ってくる途中でビルや木に衝突します。周囲の障害物より高い高度(例えば高度30mの木があるなら40〜50mなど)に設定してください。
  • ノーコン(操作不能)時の対応
    万が一操作を受け付けなくなった場合、慌てずに送信機のアンテナを高く上げ、機体の方角へ向けながら移動し、電波の回復を試みます。

「迷ったら飛ばさない」「少しでも危険を感じたら降ろす」という勇気が、最大のトラブル防止策です。

DIPS申請から飛行後まで!プロが教える実務ガイド

許可・承認が必要な特定飛行を行う場合、DIPSでの申請だけでなく、飛行後の管理も重要です。実務の流れを解説します。

DIPS申請書の具体的な書き方と添付書類の準備

DIPSで申請書を作成する際、多くのユーザーがつまずくのが「飛行マニュアル」の選択です。

  • 標準マニュアル:航空局が用意した標準的なマニュアルを使用する場合。作成の手間は省けますが、「風速5m/s以上の場合は飛行させない」などの厳しい条件が設定されています。業務の実態に合わない場合は、独自マニュアルを作成する必要があります。
  • 独自マニュアル:標準マニュアルの一部を変更して使用します。例えば「風速をメーカー推奨値まで緩和したい」場合などに選択します。

【添付書類】

独自マニュアルを使用する場合や、追加基準が必要な場合は、それらの資料をPDFで添付します。

また、操縦者の技能証明証の写しなども必要になる場合があります。申請内容は具体的かつ矛盾がないように記載しましょう。

引用元:https://www.dips.mlit.go.jp/

許可・承認取得後の義務:飛行日誌の記録と保管

2022年12月の法改正により、特定飛行を行う場合、飛行日誌(フライトログ)の作成・携帯・保管が義務化されました。

【記録すべき内容】

  • 飛行記録:いつ、誰が、どの機体で、どこを、どのように飛行させたか(離着陸時刻や場所)。
  • 日常点検記録:飛行前の点検結果(プロペラ、バッテリー、通信状況など)。
  • 整備記録:部品交換や修理の履歴。

これらの記録は紙のノートでも、Excel等の電子データでも、専用アプリでも構いませんが、速やかに提示できる状態で管理する必要があります。

違反した場合、罰金の対象となる可能性があります。

飛行日誌はアプリやExcelでもOKですが、現場ですぐに提示できる状態にしておきましょう。

引用元:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html

万が一に備えるドローン保険の選び方と重要性

どんなに注意しても事故のリスクはゼロになりません。万が一、人や車に損害を与えてしまった場合に備え、ドローン保険(賠償責任保険)への加入は必須です。

  • 賠償責任保険:対人・対物の損害賠償を補償します。業務利用の場合は「施設賠償責任保険」などが適用されるケースが多いです。
  • 機体保険:ドローン自体の破損や盗難を補償します。高価な産業用ドローンでは加入を推奨します。

ホビー用と事業用では保険商品が異なります。

業務で飛ばすのにホビー用保険にしか入っていなかった場合、補償が降りないことがあるため注意してください。

事故を未然に防ぐ!航空法以外の関連法規とトラブル事例から学ぶ

ドローンの飛行に関わる法律は航空法だけではありません。知らずに他人の権利を侵害したり、条例違反になったりするケースがあります。

プライバシー保護・民法・地方条例など関連法規の注意点

  1. 民法(土地所有権)
    民法上、土地の所有権は「その土地の上下」に及びます。他人の私有地の上空を無断で低空飛行させることは、権利侵害となる可能性があります。基本的には土地所有者の承諾を得るのがマナーであり、リスク回避策です。
  2. プライバシー権・肖像権
    空撮映像に人の顔やプライベートな空間(部屋の中など)が映り込み、それをSNS等で公開すると、プライバシー侵害や肖像権侵害として訴えられるリスクがあります。
  3. 小型無人機等飛行禁止法
    国会議事堂、大使館、原子力事業所、自衛隊施設などの「重要施設」の周辺は、航空法の許可があっても飛行禁止です(警察等の同意が必要)。
  4. 地方条例
    東京都の都立公園など、多くの自治体が公園内でのドローン飛行を条例で禁止しています。

引用元:https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html

ルール違反は重い罰則!具体的な事例と社会的影響

航空法違反には厳しい罰則が設けられています。

  • 飲酒時の飛行:1年以下の懲役または30万円以下の罰金。
  • 許可・承認なしでの特定飛行:50万円以下の罰金。

過去には、無許可でイベント上空を飛行させて落下させ、書類送検された事例や、重要文化財に衝突させて破損させ、重い損害賠償を請求された事例もあります。

一つの事故が、ドローン業界全体の規制強化(社会的信用の低下)につながることを自覚しましょう。

グレーゾーンの判断:ケーススタディで学ぶ飛行可否

ケース1:河川敷での練習

河川敷は広くて飛ばしやすそうですが、場所によっては「飛行禁止空域(空港周辺やDID)」に含まれている場合があります。また、河川管理者がドローン利用を制限している場合もあるため、事前に河川事務所のHP等で確認が必要です。

ケース2:自宅の庭での飛行

自宅がDID地区内にある場合、庭であっても屋外であれば航空法の規制対象となり、原則飛行禁止です(係留飛行などの例外を除く)。DID地区外であれば、近隣への配慮を行った上で飛行可能です。

ケース3:屋内での飛行

四方を壁や天井で囲まれた屋内(体育館や自宅室内)は、航空法の規制対象外です。ただし、窓が開いている状態などは「屋外」とみなされる場合があるため、完全に閉鎖された空間である必要があります。

私有地でもDID地区なら原則禁止。土地の権利者だけでなく航空法の規制も必ず確認しましょう。

まとめ

ドローンの安全飛行には、法律の理解と実務的な判断力の両方が不可欠です。

本記事の要点を振り返り、次のアクションへ繋げましょう。

あなたの状況に合ったドローン飛行ルール確認フローチャート

飛行計画を立てる際は、以下の流れで確認を行ってください。

  1. 機体チェック:100g以上の機体か?機体登録・リモートIDは完了しているか?
  2. 場所チェック:DID地区、空港周辺、150m以上上空、重要施設周辺ではないか?
  3. 方法チェック:夜間、目視外、30m未満、イベント上空など「特定飛行」に該当するか?
  4. 環境チェック:当日の風速は5m/s以下か?雨天ではないか?周囲の電波状況は良好か?
  5. 手続きチェック:特定飛行ならDIPS申請・許可取得済みか?飛行日誌の準備はOKか?

ドローンをもっと安全に楽しむための次の一歩

記事を読んだだけでは不安な場合や、本格的に業務で活用したい場合は、ドローンスクールでの講習受講を検討することをおすすめします。

実技指導を受けることで、とっさの時の回避能力や、正確な距離感・高度感を養うことができます。

安全は知識と準備から生まれます。ルールを守り、リスクを管理した上で、ドローンのある生活やビジネスを最大限に楽しみましょう。

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