ドローンを屋外で飛ばそうとしたとき、最初に立ちはだかる壁が「航空法」と「飛行許可申請」です。
「自分のドローンは許可が必要なのか?」「DIPS2.0の操作が難しそう」「飛行計画書はどう書けばいいの?」といった疑問や不安を抱えている方は少なくありません。
ドローンの性能が向上し、空撮や点検など活用の幅が広がる一方で、安全確保のためのルールは厳格化されています。
無許可で飛行させれば法律違反となり、罰則の対象となる可能性もあります。しかし、正しい手順を知っていれば、申請自体は決して怖いものではありません。
本記事では、ドローン飛行許可制度の基本から、国土交通省のシステム「DIPS2.0」を使用した具体的な申請手順、さらには飛行計画書の作成・通報方法までを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
この記事を読みながら手続きを進めれば、安心してドローンフライトを楽しめる準備が整います。
ドローン飛行許可はどこで?航空法と制度の基本を理解しよう
ドローンを飛ばす際、すべてのケースで許可が必要なわけではありませんが、特定の場所や方法で飛ばす場合には、航空法に基づく国土交通省の許可・承認が必要です。
まずは制度の全体像を把握しましょう。
リスクが高い「特定飛行」に該当する場合のみ、事前の許可・承認申請が必要です。
ドローン飛行許可制度の全体像と「特定飛行」の定義(なぜ許可が必要?)
航空法では、ドローンの飛行による事故やトラブルを防ぐため、リスクが高い飛行を「特定飛行」と定義し、規制しています。
特定飛行に該当する場合、事前に国土交通省へ申請を行い、許可や承認を得る必要があります。
現在、これらの申請手続きは原則としてオンライン化されており、国土交通省が運営する「ドローン情報基盤システム2.0(通称:DIPS2.0)」を通じて行います。
DIPS2.0は、機体登録から飛行許可申請、飛行計画の通報までを一元管理するプラットフォームです。
許可が必要な空域(空港周辺・DID地区など)と飛行方法(夜間・目視外など)
許可・承認が必要となる「特定飛行」は、大きく「飛ばす場所(空域)」と「飛ばす方法」の2つの観点で指定されています。
許可が必要な空域:
- 空港等の周辺空域: 航空機の安全を確保するための規制エリア。
- 緊急用務空域: 災害時などに指定される空域。
- 150m以上の高さの空域: 地表または水面から150m以上の高さ。
- 人口集中地区(DID)の上空: 国勢調査の結果に基づき設定された、人が多く集まるエリア。
承認が必要な飛行方法:
- 夜間飛行: 日没から日の出までの間の飛行。
- 目視外飛行: モニターを見ながらの操縦など、直接肉眼で機体を見ずに飛ばすこと。
- 人または物件から30m未満の飛行: 第三者や建物などに接近する飛行。
- イベント上空での飛行: 催し場所の上空での飛行。
- 危険物輸送: 爆発物などを運ぶ飛行。
- 物件投下: ドローンから物を落とす行為。
ドローンを飛ばすリスクに応じた飛行カテゴリー(Ⅰ~Ⅲ)とは
ドローンの飛行は、そのリスクの大きさによって「カテゴリーⅠ」「カテゴリーⅡ」「カテゴリーⅢ」の3つに分類されています。
- カテゴリーⅠ: 特定飛行に該当しない飛行。許可・承認は不要です。
- カテゴリーⅡ: 特定飛行のうち、立入管理措置(第三者が立ち入らないような対策)を講じた上で行う飛行。原則として許可・承認が必要です。
- カテゴリーⅢ: 第三者の上空を飛行するなど、リスクが特に高い飛行。最も厳格な手続きが求められます。
DIPS2.0では、申請時に「簡易カテゴリー判定」という機能があり、飛行内容を入力することで、どのカテゴリーに該当するかをシステムが判定してくれます。
航空法違反の罰則規定と法律を守る重要性
航空法で定められたルールに違反してドローンを飛行させた場合、罰則が科される可能性があります。
無許可で特定飛行を行った場合や、飲酒時の操縦、飛行前点検の不実施なども処罰の対象となり得ます。
「知らなかった」では済まされないため、必ず事前にルールを確認し、必要な許可を取得することが、自分自身と周囲の安全を守ることにつながります。
あなたのドローン飛行に許可は必要?具体的な判断フロー
自分の飛行計画が許可申請の対象になるかどうか、迷うことも多いでしょう。ここでは具体的な判断基準を解説します。
100g未満の機体でも「小型無人機等飛行禁止法」の対象になるため注意が必要です。
飛行許可が不要なケース(100g未満の機体、屋内飛行など)
以下のケースでは、航空法上の飛行許可・承認申請は原則として不要です。
- 機体重量が100g未満の場合:
バッテリーを含む本体重量が100g未満の機体(いわゆるトイドローンの一部)は、航空法の「無人航空機」の定義から外れ「模型航空機」として扱われます。ただし、空港周辺や一定の高度以上など、模型航空機としての規制は存在します。 - 屋内での飛行:
四方を壁や天井で囲まれた屋内(体育館や自宅内など)での飛行は、航空法の規制対象外となります。ただし、開口部がある場合やネットで囲っただけの場所は屋外とみなされることがあるため注意が必要です。
許可が必要か判断するフローチャートと具体的な判断基準
許可が必要かどうかは、以下の手順で確認するとスムーズです。
- 機体の重量を確認する
・100g未満 → 原則許可不要(※小型無人機等飛行禁止法等は遵守)
・100g以上 → 次へ - 飛ばす場所を確認する
・空港周辺、150m以上上空、人口集中地区(DID)のいずれかに該当する → 許可が必要
・該当しない → 次へ - 飛ばす方法を確認する
・夜間、目視外、30m未満接近、イベント上空、危険物輸送、物件投下のいずれかを行う → 承認が必要
・該当しない → 許可・承認は不要(カテゴリーⅠ飛行)
※DIPS2.0のトップページ等でも、飛行予定の場所がDID地区に該当するかどうかを確認できる地図機能が提供されています。
小型無人機等飛行禁止法とは?(重要施設周辺の飛行規制)
航空法とは別に、「小型無人機等飛行禁止法」という法律があります。
これは、国の重要施設(国会議事堂、首相官邸、外国公館、原子力事業所など)とその周辺(概ね300m)でのドローン飛行を禁止するものです。
この法律は、100g未満のトイドローンを含むすべてのドローンが対象です。
対象地域で飛行させる場合は、施設管理者等の同意を得た上で、都道府県公安委員会等への通報が必要です。航空法の許可が不要な機体であっても、この法律の規制を受ける場合があるため、場所選びには十分注意してください。
DIPS2.0でドローン飛行許可を申請する手順【画面付きで徹底解説】
許可が必要な場合、DIPS2.0を使って申請を行います。ここでは一般的な流れを解説します。
申請前に「機体登録」と「操縦者登録」を済ませておくことが必須です。
DIPS2.0アカウントの作成からログインまで
まず、DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)の公式サイトにアクセスします。
- アカウント開設:
トップページの「アカウント作成」から、個人または法人の情報を入力してIDを取得します。 - ログイン:
作成したIDとパスワードでシステムにログインします。 - 事前準備(機体・操縦者登録):
飛行許可申請を行う前に、必ず「機体登録」と「操縦者登録」を済ませておく必要があります。これらが完了していないと、申請画面で機体や操縦者を選択できません。
申請情報の入力と申請書作成のポイント
ログイン後、「飛行許可・承認申請へ」のメニューから手続きを開始します。
- 簡易カテゴリー判定:
飛行させる目的や方法についての質問に答えていくと、カテゴリー判定が行われます。 - 飛行概要の入力:
・飛行理由: 空撮、点検などから選択します。
・飛行期間: 包括申請(1年間など)か、個別申請(特定の日時)かを選択します。
・飛行場所: 特定の場所か、日本全国(包括申請の場合)かを指定します。 - 詳細情報の入力:
夜間飛行や目視外飛行など、具体的な飛行方法を選択し、それぞれの安全対策基準に適合しているかチェックを入れます。 - 機体・操縦者の選択:
事前に登録しておいた機体と操縦者を選択し、申請に紐づけます。独自の飛行マニュアルを使用する場合は、その添付もここで行います(標準マニュアルを使用する場合は選択のみ)。
審査期間の目安と許可書受領後の流れ
申請書を提出(送信)すると、国土交通省(または各航空局)による審査が行われます。
- 審査期間:
申請内容に不備がなければ、一定期間で審査が完了します。申請が集中する時期や内容によっては時間がかかる場合があるため、飛行予定日の10開庁日前(約2週間前)には申請を済ませるなど、余裕を持ったスケジュールが推奨されます。 - 許可書の受領:
審査が完了するとメールで通知が届きます。DIPS2.0にログインし、電子許可書(PDFファイル)をダウンロードして保存します。飛行の際は、この許可書を携帯(スマホ画面での提示や印刷)する必要があります。
スムーズな審査のための「よくある失敗」と対策
申請が差し戻しになる原因として、入力ミスや添付書類の不備が挙げられます。
- 機体情報の未更新: 機体登録情報が最新でない場合、選択できないことがあります。
- 独自マニュアルの不備: 標準マニュアル以外を使用する場合、記載内容が不足していると修正を求められます。
- 安全対策の記載漏れ: 特定の飛行方法に対する安全対策(補助者の配置など)が適切に選択されているか確認しましょう。
飛行計画書の作成方法とDIPS2.0での登録(記入例付き)
許可を取得した後、実際に特定飛行を行う際には「飛行計画の通報」が必要です。
これは、いつ・どこで・誰が飛ばすかを事前に共有し、他のドローンや航空機との衝突を防ぐための仕組みです。
許可を取得していても、通報を行わずに特定飛行を行うと法令違反となります。
飛行計画書とは?なぜ作成・登録が重要なのか
「飛行計画の通報」は、特定飛行を行う場合に航空法で義務付けられています。DIPS2.0には、この通報を行う機能が備わっています。
事前に飛行計画を登録することで、同じ空域で飛行する他のドローン操縦者と情報が共有され、空域の重複や事故のリスクを減らすことができます。
飛行計画書の主要項目と具体的な記入例
DIPS2.0の「飛行計画の通報・確認」メニューから入力します。主な入力項目は以下の通りです。
- 飛行日時: 開始時刻と終了時刻を入力します。
- 飛行エリア: 地図上で飛行範囲を指定します。
- 高度: 飛行させる高度の上限を設定します。
- 機体情報: 使用する機体を選択します。
- 操縦者情報: 当日操縦する担当者を選択します。
- 連絡先: 緊急時の連絡先を確認します。
システム上の地図を使って直感的に範囲を指定できるため、複雑な書類作成というよりは、スケジュールの登録に近いイメージです。
効率的な飛行計画書作成テクニックと「飛行計画アプリ」の活用法
DIPS2.0はPCブラウザだけでなく、スマートフォンからもアクセス可能です。
また、一部の民間事業者が提供するドローン飛行支援アプリの中には、DIPS2.0と連携して飛行計画の通報を行えるものもあります。
- エリア登録のコツ: 頻繁に飛ばす場所は、DIPS2.0上でお気に入り登録や履歴からの呼び出しを活用すると、入力の手間を省けます。
- アプリ活用: 現場で急遽飛行が決まった場合などは、スマホ対応のインターフェースを持つ連携アプリや、DIPS2.0のスマホ版サイトを利用するとスムーズに通報できます。
飛行計画の変更・中止時の通報方法
天候悪化やスケジュールの変更で飛行計画が変わった場合は、速やかにDIPS2.0で情報の更新を行う必要があります。
- 変更の場合: 登録済みの計画を呼び出し、日時やエリアを修正して再登録します。
- 中止の場合: 飛行を行わなくなった時点で、登録した計画を削除(取り下げ)します。
正確な情報を常にシステム上に反映させておくことが、空の安全を守るマナーであり義務です。
特定の飛行条件における許可基準と注意点(夜間・目視外など)
特定飛行の中でも、特によく行われる飛行方法について、注意点を整理します。
夜間や目視外飛行では、補助者の配置やフェールセーフ機能の確認が重要です。
夜間飛行・目視外飛行の許可基準と追加要件
- 夜間飛行:
機体の向きを視認できる灯火(ライト)を装備していることが前提となります。また、周囲の障害物が見えにくいため、飛行範囲の事前確認や補助者の配置などの安全対策が求められます。 - 目視外飛行:
モニター監視での飛行などが該当します。機体にカメラが搭載されていることや、自動操縦時のフェールセーフ機能(電波断絶時の自動帰還など)が正常に作動することが求められます。補助者を配置しない場合は、より高度な安全措置が必要です。
人・物件から30m未満の飛行(イベント上空など)
第三者(操縦者や関係者以外の人)や、第三者の物件(建物、車など)から30m未満の距離で飛行させる場合です。
プロペラガードの装着や、飛行速度の制限、立入禁止区画の設定など、万が一墜落しても被害を出さないための対策が必要です。
その他の特殊な飛行方法と対応(危険物輸送、物件投下など)
農薬散布(危険物輸送・物件投下に該当する場合あり)などを行う際は、それぞれの特性に応じた厳しい基準があります。
使用する機体がそれらの飛行に耐えうる性能を持っているか、DIPS2.0の機体登録情報で確認・申告する必要があります。
ドローン飛行許可申請のポイントと最新情報まとめ
最後に、申請前に確認すべきポイントと、知っておくべき周辺情報をまとめます。
法規制は頻繁に改正されるため、常に最新情報をチェックしましょう。
申請前に確認すべき最終チェックリスト
申請ボタンを押す前に、以下を確認しましょう。
- 機体登録と操縦者登録は完了しているか?
- 飛行させる空域はDID地区や空港周辺に該当するか?
- 夜間や目視外など、予定している飛行方法はすべて選択されているか?
- 独自マニュアルを使用する場合、添付ファイルは正しいか?
- 審査期間を考慮し、飛行予定日まで十分な余裕があるか?
最新の法改正と制度変更(レベル3.5飛行等)の動向
ドローンに関する法規制は、技術の進歩に合わせて頻繁に改正されています。
例えば、立入管理措置を講じた上での目視外飛行の規制緩和(レベル3.5飛行)など、新しい制度が導入されることがあります。
古い情報のまま申請しようとすると不備になる可能性があるため、DIPS2.0のトップページや国土交通省の公式サイトで、常に最新のお知らせを確認する習慣をつけましょう。
ドローン保険加入の重要性と選び方
許可申請とは直接関係ありませんが、万が一の事故に備えて「ドローン保険(賠償責任保険)」への加入を強く推奨します。
対人・対物事故が起きた際の賠償額は高額になる可能性があります。
趣味用(ホビー用)や業務用など、用途に合わせた保険商品が多数提供されていますので、飛行前には必ず加入状況を確認してください。
ドローンの飛行許可申請は、一見複雑に見えますが、DIPS2.0の導入により手続きは大きく効率化されています。
「特定飛行」に該当するかを正しく判断し、必要な場合は余裕を持って申請を行うことが大切です。
また、許可を取得した後も「飛行計画の通報」や「飛行日誌の記録」といった運用ルールを守ることが求められます。これらの手続きは、あなた自身が安心してドローンを飛ばすための「安全のパスポート」です。
FlyMovie Techでは、テクノロジーを安全に楽しむための情報をこれからも発信していきます。正しい知識と準備で、素晴らしいドローンライフを楽しんでください。


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