ドローン飛行前点検の義務と手順|夜間も対応

ドローン飛行前点検の義務と手順|夜間も対応

この記事の結論
・飛行前点検は航空法で定められた義務であり、特定飛行では飛行日誌への記録も必須となる

・機体やバッテリーの物理的な確認に加え、アプリ上のステータスやファームウェア更新も重要

・夜間飛行や飛行禁止区域などの環境要因も確認し、万全の状態で安全なフライトを行う

ドローンを飛ばす前の準備として、バッテリーの充電やSDカードのフォーマットだけで済ませてはいないでしょうか。

実は、ドローンの飛行前点検は単なる推奨事項ではなく、航空法によって定められた操縦者の重要な義務です。わずかな不具合を見逃しただけで、墜落事故や法的なトラブルに発展するリスクがあります。

本記事では、ドローンを安全に運用するために必須となる「飛行前点検」について、法的な根拠から具体的なチェック手順までを初心者にも分かりやすく解説します。

また、近年需要が高まっている「夜間飛行」を行う際に必要な条件や、特有の点検ポイントについても詳しく触れていきます。正しい点検知識を身につけ、安心して空撮やフライトを楽しめるようになりましょう。

目次

ドローン飛行前点検は義務!安全な運用を徹底すべき理由

ドローンを飛行させる際、機体の状態を確認することは操縦者の責任です。ここでは、なぜ点検が必要なのか、法律と安全管理の両面から解説します。

航空法で定められた「義務」と「罰則」を理解する

ドローンの飛行前点検は、航空法によって明確に義務付けられています。航空法施行規則では、無人航空機を飛行させる者に対し、飛行前に機体の外部点検および作動点検を行うことを求めています。

これは、趣味で飛ばす場合でも業務で飛ばす場合でも、航空法が適用される空域や機体であれば遵守しなければなりません。

特に、国の許可・承認が必要な「特定飛行」を行う場合、点検を怠ったり、後述する飛行日誌への記録を行わなかったりすると、航空法違反として罰金などの罰則が科される可能性があります。法令を遵守し、安全な空の利用を守るためにも、点検は必須のプロセスです。

特定飛行を行う際は、点検の実施と記録が法律上の義務となります。

事故を防ぎ、機体を長持ちさせるための基本

法的な義務以前に、点検は事故を防ぐための「命綱」です。ドローンは精密機器であり、振動や衝撃、保管環境の影響を受けやすい性質があります。

例えば、プロペラに小さな亀裂が入っているだけで、飛行中に破損し墜落する危険性があります。

また、飛行前に異常に気づくことができれば、高額な機体を全損させるリスクを回避できます。日々の点検で小さな不調を早期に発見しメンテナンスを行うことは、結果として機体の寿命を延ばし、経済的なメリットにもつながります。

「飛行日誌」への記録義務と重要性

2022年12月の改正航空法施行により、特定飛行を行う際には「飛行日誌」の作成・携行・保管が義務化されました。この飛行日誌には、以下の3つの記録が含まれます。

  • 飛行記録:いつ、どこで、誰が飛ばしたか
  • 日常点検記録:飛行前および飛行後の点検結果
  • 点検整備記録:修理や定期点検の履歴

日常点検記録は、「飛行の前」だけでなく「飛行の後」にも実施し、記録することが求められています。万が一トラブルが発生した際、これらの記録は原因究明や適切な整備状況の証明として機能します。

【チェックリスト付】ドローン飛行前点検の具体的な手順

ここでは、実際に飛行前に行うべき具体的な点検項目を解説します。国土交通省のガイドラインや一般的な安全基準に基づき、以下の手順で確認を行いましょう。

機体本体の物理的な点検(プロペラ、モーター、アームなど)

まずは電源を入れずに、機体の外観を目視と手触りで確認します。

  • プロペラ:割れ、欠け、変形がないか確認します。小さな傷でも飛行バランスを崩す原因になります。
  • モーター:手で回してみて、異音や引っかかりがないか、スムーズに回転するかを確認します。砂や異物が混入していないかもチェックします。
  • 機体フレーム・アーム:アームの展開部分にガタつきがないか、フレームに亀裂が入っていないかを確認します。
  • ネジの緩み:各部のネジがしっかりと締まっているか確認します。振動で緩むことがあるため重要です。
  • カメラ・ジンバル:レンズの汚れや、ジンバルの動きを妨げる固定具(カバー)の外し忘れがないか確認します。

バッテリーの状態と充電量の確認

バッテリーはドローンの動力源であり、最もトラブルが起きやすい箇所の一つです。

  • 外観:バッテリー自体が膨らんでいないか、端子に汚れやサビがないか確認します。膨張しているバッテリーは発火のリスクがあるため使用してはいけません。
  • 充電量:満充電されているか確認します。また、予備バッテリーも含めて十分な本数があるかチェックします。
  • 装着状態:機体にセットした際、「カチッ」と音がするまで確実にロックされているか確認します。飛行中に脱落すると即墜落につながります。

特に装着状態の確認は最重要です。「カチッ」と音がするまで確実にロックされているか、必ず手で引っ張って確認してください。

コントローラーと通信環境のチェック

機体だけでなく、操縦に使用する送信機(プロポ)の確認も行います。

  • スティックの動作:スティックやスイッチがスムーズに動くか、物理的な破損がないか確認します。
  • バッテリー残量:コントローラーの充電が十分か確認します。スマートフォンやタブレットを使用する場合は、そちらの充電残量も重要です。
  • アンテナ:アンテナの向きや状態を確認し、破損がないかチェックします。

アプリ・ファームウェアの更新と設定確認

電源を入れた後、ソフトウェア側の確認を行います。

  • ファームウェア:機体、送信機、バッテリーのファームウェアが最新版に更新されているか確認します。更新通知がある場合は、飛行現場ではなくWi-Fi環境の整った自宅等で事前にアップデートを済ませておくのが鉄則です。
  • アプリのエラー表示:専用アプリを起動し、コンパスエラーやIMUエラーなどの警告が出ていないか確認します。
  • フェールセーフ設定:電波が途切れた際やバッテリー低下時に、機体が自動で戻ってくる「リターントゥホーム(RTH)」の高度設定が、周囲の障害物より高く設定されているか確認します。

RTHの高度設定は、周囲の最も高い障害物よりも高く設定しましょう。

不具合発見時の対処法と機種別チェックのヒント

点検中に異常が見つかった場合の対応や、メーカー製アプリを活用した効率的な確認方法について解説します。

異常を発見したら?飛行中止と専門家への相談

点検で少しでも「おかしい」と感じる箇所があった場合、絶対に飛行させてはいけません。「少しだけなら大丈夫だろう」という油断が事故を招きます。

物理的な破損であればパーツの交換が必要です。プロペラなどの消耗品は予備を持っておき、現場で交換できるようにしておくと良いでしょう。

内部のセンサー異常やモーターの異音など、自分では判断がつかない不具合の場合は、メーカーのサポート窓口や専門の修理業者に相談してください。無理に自己修理を行うと、保証の対象外になるだけでなく、安全性が損なわれる可能性があります。

DJI製品など主要機種でのアプリを活用した点検方法

DJIなどの主要ドローンメーカーが提供する操縦アプリ(DJI Flyなど)には、飛行前のセルフチェック機能が搭載されています。

アプリ画面上では、離陸前に「機体ステータス」を確認できます。ここでは、GPSの受信状況、コンパスの干渉、バッテリー温度、SDカードの残量などが一覧で表示されます。

「離陸許可」や「Normal」といった表示が出ていても、詳細ステータスを開いて各項目が正常値であることを確認する習慣をつけましょう。ただし、アプリの表示はあくまでセンサーが検知できる範囲の情報です。物理的なネジの緩みなどは検知できないため、目視点検と組み合わせることが重要です。

飛行前点検以外の「定期点検」の重要性

飛行ごとの点検(日常点検)に加え、一定期間ごとに行う「定期点検」も重要です。自動車に車検があるように、ドローンも飛行時間や期間に応じて、メーカーや認定整備工場による詳細な点検を受けることが推奨されます。

内部の配線やモーターの摩耗具合など、外観からは分からない劣化をプロの目でチェックしてもらうことで、長期的に安全な運用が可能になります。

アプリのステータス表示だけでなく、必ず目視による物理点検も併用してください。

【同時獲得】ドローン夜間飛行の条件と追加点検項目

日没後から日の出前までの「夜間飛行」は、日中とは異なるリスクがあり、法的な扱いも厳しくなります。夜間飛行を行うための条件と、特有の点検ポイントを解説します。

夜間飛行に必要な許可・承認と法的条件

航空法において、夜間飛行は原則として禁止されています。これを行うには、国土交通大臣の承認(特定飛行の承認)が必要です。ただし、係留飛行などの一部例外や、包括申請を取得している場合はその範囲内で飛行可能です。

夜間飛行を行う法的条件として、機体の灯火(ライト)によって位置や向きを視認できる状態であることが求められます。無許可で夜間にドローンを飛ばすことは法律違反となるため、必ず事前に適切な手続きを行ってください。

夜間飛行特有のリスクと注意点

夜間は周囲が暗く、機体の位置や向き、障害物との距離感が把握しづらくなります。また、機体に搭載されている障害物検知センサー(ビジョンセンサー)は、光量が不足していると機能しない場合が多く、自動回避機能に頼った飛行はできません。

さらに、モニター画面の明るさが暗闇の中で目立ち、操縦者の目が幻惑されて周囲の状況(他の航空機や障害物)を見落とすリスクもあります。

夜間飛行時に必須の追加点検(照明、視認性、補助者の配置など)

夜間飛行を行う際は、通常の点検に加えて以下の項目を確認する必要があります。

  • 灯火の点灯確認:機体のLEDライト(ナビゲーションライト)が正常に点灯・点滅し、前後左右の識別が可能か確認します。
  • 補助者の配置と通信:目視外飛行に近い状態となるため、機体の監視や周囲の安全確認を行う補助者を配置し、操縦者と確実に連絡が取れるか確認します。
  • 発着場所の照明:離着陸ポイントを照らす照明器具(ランディングパッド用のライトなど)が機能するか確認します。

暗闇での安全な運用テクニック

夜間飛行を安全に行うためには、機体を遠くに飛ばしすぎないことが鉄則です。機体のLEDが見える範囲内(目視内)での飛行を徹底しましょう。

また、日中に比べて高度や距離の感覚が狂いやすいため、アプリ上の数値(高度・距離)をこまめに確認します。

万が一見失った場合に備え、RTH(リターントゥホーム)の設定高度を、周囲の建物や木々よりも十分に高く設定しておくことも重要です。ただし、暗闇では障害物センサーが効かない可能性があるため、RTH発動時のルート上に障害物がないか、事前に入念な確認が必要です。

夜間は障害物センサーが機能しないことが多いため、目視確認をより慎重に行いましょう。

機体点検以外に確認すべき周辺環境と飛行計画

機体が完璧な状態でも、飛ばす環境や計画に問題があれば安全は守れません。飛行前に確認すべき環境要因について解説します。

飛行禁止区域・許可が必要な空域の確認

飛行予定の場所が、航空法で定める「飛行禁止区域」に該当しないか確認します。

  • 人口集中地区(DID)
  • 空港周辺
  • 150m以上の空域
  • 国の重要施設周辺

これらの場所で飛ばすには許可が必要です。また、条例で飛行が禁止されている公園や、私有地の上空など、土地の管理者への確認も忘れずに行いましょう。

気象条件(風速・雨・視界)のチェック

ドローンは風や雨に弱い乗り物です。

  • 風速:一般的に風速5m/s以上での飛行は危険とされています。地上が無風でも上空は風が強いことがあるため、アプリの天気情報や風速計を活用しましょう。
  • 雨・雪:防水仕様でない限り、雨天時の飛行は厳禁です。内部回路がショートし、墜落の原因になります。
  • 視界:霧や雲で視界が悪い場合も飛行を中止すべきです。

周囲の状況確認と第三者への配慮

離着陸地点や飛行ルートの下に、第三者(人)や物件(車、建物)がないか確認します。飛行中は予期せぬ動きをすることがあるため、第三者からは30m以上の距離を保つことが法令上のルール(承認がない場合)となっています。

また、高圧電線や鉄塔の近くは電波干渉のリスクがあるため避けるのが賢明です。

最新情報の入手と安全知識のアップデート

ドローンに関する法律や規制は頻繁に改正されます。機体登録制度の導入やリモートIDの搭載義務など、新しいルールが次々と施行されています。

「知らなかった」では済まされないため、国土交通省のWebサイトやドローン関連のニュースメディアを定期的にチェックし、常に最新の知識を持って運用計画を立てることが重要です。

上空の風速や電波干渉など、目に見えないリスクも事前にチェックしましょう。

ドローン飛行前点検で安全な空撮・飛行を楽しもう

飛行前点検は、ドローンライフを長く楽しむためのパスポートのようなものです。最後に、本記事のポイントを振り返ります。

本記事のまとめと再確認すべきポイント

  • 点検は法的義務:航空法により飛行前点検は義務付けられており、特定飛行では飛行日誌への記録も必須です。
  • 物理とアプリの両面で確認:プロペラやバッテリーの物理的な確認と、アプリ上のステータス確認の両方を行います。
  • 夜間飛行は慎重に:灯火の確認や補助者の配置など、夜間特有の準備と承認が必要です。
  • 環境確認もセットで:機体だけでなく、空域や天候、周囲の安全も点検の一部です。

安全なドローン運用を継続するための心構え

ドローンの技術は進化し、機体はますます高性能になっています。しかし、最終的に安全を担保するのは操縦者の意識です。「今日は調子が良いから点検しなくていいや」という慢心が最大の敵です。

毎回必ずチェックリストに基づいた点検を行い、飛行日誌に記録を残す。このルーティンを徹底することで、自分自身だけでなく、周囲の人々の安全も守ることができます。正しい準備と知識を持って、素晴らしい空の世界を楽しんでください。

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