ドローンを用いた測量技術は、建設現場や土木管理の効率化に大きく貢献しています。
しかし、導入を検討する際にハードルとなるのが、専用ソフトウェアのコストです。「まずは無料で試してみたい」「コストを抑えて測量を始めたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、無料で利用可能なドローン測量関連ソフトウェアの種類や機能、導入方法について解説します。
自動操縦ソフトとデータ解析ソフトの違いや、無料で利用できる範囲の現状を整理し、初心者がドローン測量を始めるためのステップを提案します。
ドローン測量にソフトウェアが必須な理由と基本的な役割【初心者向け】
ドローン測量は、単にドローンを飛ばして撮影するだけでは成立しません。
正確な測量データを取得し、活用可能な形式に変換するためには、専用のソフトウェアが不可欠です。ここでは、ドローン測量におけるソフトウェアの役割と種類について解説します。
ドローン測量の基本プロセスとソフトウェアの重要性
ドローン測量は一般的に、「飛行計画の作成」「自動飛行による撮影」「撮影データの解析・処理」「成果物の出力」というプロセスで進行します。
人間が手動でドローンを操作して測量用の写真を撮影することは、高度やオーバーラップ率(写真の重なり具合)を一定に保つことが困難であるため、現実的ではありません。
また、撮影した数百枚以上の写真を繋ぎ合わせて地図や3Dモデルを作成する作業も、手作業では不可能です。
これらの工程を正確かつ効率的に行うために、各段階に応じたソフトウェアが必要となります。ソフトウェアを使用することで、均質なデータの取得と、高精度な解析が可能になります。
「自動操縦ソフト」と「データ解析ソフト」の違いと役割
ドローン測量で使用されるソフトウェアは、大きく分けて「自動操縦ソフト」と「データ解析ソフト」の2種類があります。
- 自動操縦ソフト(フライトプランナー)
ドローンの飛行ルートや高度、撮影間隔などを設定し、自動で飛行・撮影を行わせるためのアプリです。測量に必要な「オーバーラップ率」などを管理し、均一な写真を撮影する役割を担います。 - データ解析ソフト(3Dマッピングソフト)
ドローンが撮影した複数の写真を解析し、オルソ画像(歪みのない地図画像)や3D点群データなどを生成するPC向けソフトウェアです。写真測量の計算処理を行い、地形や構造物を数値データ化する役割を持ちます。
正確な測量を行うためには、自動操縦とデータ解析の両方のソフトが必要です。
無料で使えるドローン測量関連ソフトの種類と機能例
「無料」で利用できるドローン測量ソフトには、どのようなものがあるのでしょうか。
調査データに基づき、現在利用可能な無料オプションや試用版について具体的に紹介します。
無料のドローン自動操縦アプリと代表的な機能
ドローンの自動操縦に関しては、メーカー純正のアプリが無料で提供されているケースが多く見られます。
代表的な例として、DJI製のドローンで使用できる「DJI GS Pro(Ground Station Pro)」があります。このアプリはiPad向けに無料で提供されており、以下の機能が利用可能です。
- 計測撮影領域モード:指定したエリア内の飛行ルートを自動生成します。
- パラメータ設定:飛行高度やラップ率(写真の重なり率)などを詳細に設定し、自動飛行させることができます。
このように、多くのドローンメーカーでは機体購入時に純正の自動操縦ソフトを無料で提供しており、追加コストなしで自動飛行を開始できる環境が整っています。
無料・試用版で利用可能なデータ解析ソフトとその特徴
撮影したデータを処理する「データ解析ソフト」については、高機能な有料ソフトが主流ですが、期間限定の無料キャンペーンや試用版(デモ版)を利用することで、コストを抑えて試すことが可能です。
- TerraMapper(テラマッパー)
国産のドローン測量ソフトです。公式サイトからデモアカウントの発行が可能となっており、導入前に機能を試すことができます。 - Pix4Dmatic(ピックスフォーディーマティック)
ACSL社の小型空撮機体「SOTEN(蒼天)」を購入したユーザーを対象に、Pix4Dmaticのライセンスを6か月間無償で提供するキャンペーンなどが実施されることがあります。
なお、永続的にすべての機能が無料で利用できるデータ解析ソフトの公式情報は、今回の調査では確認できませんでした。
解析ソフトに関しては、デモ版やキャンペーンをうまく活用することが現実的な「無料」の選択肢となります。
オープンソースの測量関連ツールも選択肢に
費用を抑えたいユーザーにとって、オープンソースソフトウェア(OSS)は魅力的な選択肢となり得ます。
しかし、現時点での調査データにおいて、初心者でも容易に導入できる具体的なオープンソースのドローン測量ツールの公式情報は確認できませんでした。
一般的にオープンソースのツールは、コミュニティによって開発・維持されており、利用には高度なITリテラシーや環境構築の知識が求められる場合があります。
無料での利用を目指す場合、こうしたツールを自身で調査・検証する必要があることを認識しておく必要があります。
解析ソフトはデモ版や期間限定キャンペーンを積極的に活用しましょう。
無料ドローン測量ソフトでできること・できないこと【限界と活用法】
無料(または試用版)のソフトウェアを利用する場合、有料版と比較してどのような制限があるのかを理解しておくことが重要です。
無料ソフトで作成できる成果物の具体例と活用シーン
データ解析ソフトを利用することで、一般的に以下のような成果物が作成可能です。
- オルソ画像:空撮写真の歪みを補正し、地図と重ね合わせられるようにした画像。
- 3D点群データ:地形や建物の形状を点の集合で表現したデータ。
- DSM(数値表層モデル):地表にある建物や樹木を含めた高さ情報を持つデータ。
無料の試用版やデモアカウントであっても、これらの生成機能を体験できる場合があります。
ただし、データの保存や出力(エクスポート)に制限がかけられているケースが一般的です。具体的な成果物の利用範囲については、各ソフトの利用規約を確認する必要があります。
機能制限や測量精度における限界と注意点
無料版や試用版のソフトでは、以下のような制限が設けられている可能性があります。
- 利用期間の制限:数週間から数ヶ月程度の利用に限られる。
- 出力制限:解析結果をファイルとして保存・出力できない、または透かし(ウォーターマーク)が入る。
- 処理枚数の制限:一度に解析できる写真の枚数が制限されている。
また、測量精度に関しては、ソフトウェアの性能だけでなく、ドローンのGPS精度や撮影条件にも大きく依存します。
無料ソフトだからといって計算精度が極端に低いとは限りませんが、業務レベルの精度保証やサポートが得られない点は注意が必要です。
無料版と有料版の具体的な違いと見極め方
有料版と無料版(試用版)の最大の違いは、「業務利用の可否」と「サポート体制」にあります。
- 業務利用:試用版は商用利用が禁止されている場合があります。
- 機能の全開放:有料版では、体積計算や詳細なレポート作成など、高度な機能が利用可能です。
将来的に有料版への移行を検討する際は、試用期間中に「操作性(UIの使いやすさ)」や「自分のPC環境でスムーズに動作するか」を見極めることが重要です。
無料版はデータの保存や出力に制限がある点に注意が必要です。
【実践】無料でドローン測量を始めるステップと選び方
ここでは、初心者が実際に無料のツールを活用してドローン測量を体験するための手順を解説します。
初心者向け!無料ソフト導入から簡易測量までのロードマップ
- 機体と自動操縦アプリの準備
まず、ドローン機体を用意し、対応する無料の自動操縦アプリ(DJI GS Proなど)をタブレット等にインストールします。 - 飛行計画の作成
アプリ上で測量したいエリアを指定し、高度やラップ率を設定して飛行ルートを作成します。 - 自動飛行とデータ取得
現地で安全を確認し、自動飛行を実行して写真を撮影します。 - 解析ソフト(試用版)の導入
PCにデータ解析ソフトのデモ版や試用版をインストールします。 - データ解析の実行
撮影した写真をPCに取り込み、解析ソフトで処理を実行して3Dモデルやオルソ画像を生成します。
目的別・無料ソフトの選び方ガイド
「まずは自動飛行を試したい」場合
お持ちのドローンメーカーが提供している純正アプリ(無料)を使用するのが最も確実で安全です。
「3Dデータを作ってみたい」場合
TerraMapperなどのデモ版や、機体購入特典のキャンペーンを利用して、解析ソフトを一時的に導入してみましょう。
無料ソフト使用時のPCスペック要件と準備
データ解析ソフトは、大量の画像データを処理するため、PCに高い負荷がかかります。
具体的な推奨スペックは各ソフトウェアによって異なりますが、一般的には高性能なCPU、十分なメモリ(RAM)、およびグラフィックボード(GPU)を搭載したPCが推奨されます。
今回の調査データにおいて、無料ソフトごとの詳細な推奨スペックに関する公式情報は確認できませんでしたが、一般的なオフィス用PCでは処理に時間がかかりすぎる、または動作しない可能性があります。
事前に各ソフトの公式サイトで動作環境を確認することをおすすめします。
解析処理には高性能なGPU搭載PCが必要になるケースが大半です。
無料ソフト利用の注意点と有料版へのステップアップ
無料ソフトでの体験を経て、本格的な測量業務を行う場合には、いくつかの注意点とステップアップの検討が必要です。
無料ソフトの潜在的なリスクとサポート体制
無料のソフトウェアや試用版を利用する場合、メーカーによる手厚いサポートは期待できないことが一般的です。
操作方法の不明点やエラーが発生した際に、自己解決が求められるケースが多くなります。また、セキュリティ面やデータの取り扱いに関しても、利用規約を十分に確認する必要があります。
有料ソフトへのデータ連携と移行のメリット
無料版(試用版)で作成したプロジェクトデータは、有料版へ移行することでそのまま引き継げる場合があります(ソフトの仕様によります)。
有料版へ移行することで、データの出力制限が解除され、CADソフトなど他の業務ツールとのデータ連携が可能になるメリットがあります。
プロフェッショナルな測量を目指すためのロードマップ
本格的なドローン測量業務を目指す場合、以下のステップで進めることが推奨されます。
- 無料ツールでの基礎習得:自動飛行の原理や解析の流れを理解する。
- 有料ソフトの導入:業務に必要な機能(精度管理、体積計算など)を持つソフトを選定する。
- 測量知識の学習:公共測量の基準や精度管理の手法を学ぶ。
まずは無料で利用できるリソースを最大限に活用し、ドローン測量の全体像を掴むことから始めてみてはいかがでしょうか。
将来的な業務利用を見据えて有料版への移行を検討しましょう。
まとめ
ドローン測量を無料で始めるには、メーカー純正の「自動操縦アプリ」と、データ解析ソフトの「試用版」や「キャンペーン」を組み合わせるのが現実的な方法です。
- 自動操縦:DJI GS Proなど、多くのメーカー純正アプリが無料で利用可能。
- データ解析:TerraMapperのデモ版やPix4Dmaticの期間限定キャンペーンなどを活用。
- 注意点:永続無料の解析ソフトは一般的ではなく、試用版には機能制限があることを理解する。
まずは手持ちの機体と無料アプリで自動飛行を試し、解析ソフトのデモ版でデータ処理を体験することで、コストをかけずにドローン測量の第一歩を踏み出すことができます。


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