台風や地震などの自然災害後、あるいは経年劣化による雨漏りの不安から、自宅の屋根の状態を確認したいと考える方は少なくありません。
しかし、梯子を使って屋根に登る行為は転落のリスクが高く、専門知識がない一般の方にとっては非常に危険です。
そこで近年、安全かつ手軽に屋根の状態を確認できる手段として「ドローン」の活用が急速に普及しています。
本記事では、屋根点検におけるドローンの活用メリットやデメリットといった基礎知識から、最適なドローン機種の選び方、さらには運用に必要な「資格」や「法律」について網羅的に解説します。
テック総合メディア「FlyMovie Tech」として、初心者の方にも分かりやすく、事実に基づいた情報をお届けします。
ドローンによる屋根点検とは?メリット・デメリット・注意点
ドローンによる屋根点検とは、小型無人航空機(ドローン)に搭載されたカメラを使用して、上空から屋根の撮影・検査を行う方法です。
従来、屋根の点検は作業員が屋根に登って目視で行うのが一般的でしたが、ドローン技術の進化により、より安全で効率的な点検が可能になりました。
ここでは、その具体的なメリットと、導入前に知っておくべきデメリットを解説します。
ドローン点検が注目される背景と具体的なメリット
ドローン点検が注目される最大の理由は「安全性」と「効率性」にあります。
まず、屋根に登る必要がないため、点検中の転落事故リスクをゼロにできます。特に急勾配の屋根や、劣化が進んで踏み抜く危険性がある屋根でも、安全な場所から操作するだけで状況を確認可能です。
足場設置が不要なため、点検時間を大幅に短縮しコスト削減にも貢献します。
また、足場を組む必要がないため、点検にかかる時間を大幅に短縮できます。
従来の点検では準備を含めて半日以上かかることもありましたが、ドローンであれば数十分程度で撮影を完了できるケースも多く、費用削減にもつながります。
さらに、高解像度カメラや赤外線カメラを搭載したドローンを使用することで、肉眼では見落としがちな微細なひび割れや雨漏り箇所の特定など、高精度なデータ取得が可能になります。
ドローン点検のデメリットと知っておくべき注意点
一方で、ドローン点検にはいくつかのデメリットや限界も存在します。
最も大きな課題は「触診(打診)」ができないことです。
ドローンは映像による確認に特化しているため、屋根材の浮き具合を手で触って確認したり、叩いた音で内部の腐食を判断したりすることはできません。
また、天候に左右されやすい点も注意が必要です。雨天時はもちろん、強風時には飛行が不安定になるため点検を行えません。
さらに、プロペラの回転音による騒音が発生するため、近隣住民への配慮が必要です。都市部や住宅密集地では、プライバシー侵害への懸念や、航空法による飛行規制の対象となる場合があり、事前の確認と対策が不可欠です。
ドローン点検が不向きなケースと従来の点検との適切な併用
ドローンは万能ではありません。例えば、屋根の裏側や軒下の奥まった部分など、上空からのカメラアングルでは死角になる場所の点検は苦手とします。
また、すでに雨漏りが発生しており、緊急の応急処置が必要な場合は、最初から職人が登って作業を行う方が効率的な場合もあります。
したがって、まずはドローンで全体をスクリーニング(一次検査)し、異常が見つかった箇所や詳細な調査が必要な場合にのみ、専門業者が屋根に登って精密検査を行うという「併用」が最も合理的で安全なアプローチと言えます。
屋根点検用ドローンを選ぶポイントとおすすめ機種
自社で点検業務を行いたい事業者や、DIYで自宅の点検を検討している方にとって、どのドローンを選ぶかは重要な問題です。
屋根点検に適した機体を選ぶための基準と、テックメディアの視点から選定したおすすめ機種を紹介します。
失敗しない屋根点検用ドローンの選び方
屋根点検に使用するドローンを選ぶ際は、以下の4つのポイントを重視してください。
- カメラ性能(ズーム機能・解像度)
屋根に接近しすぎると衝突のリスクがあるため、ある程度離れた距離からでも詳細を確認できる「ズーム機能」が重要です。また、ひび割れを鮮明に記録するために、4K以上の動画撮影や高画素数の静止画撮影ができるモデルが望ましいです。 - 障害物検知センサー
屋根や壁、電線などの障害物に接近した際、自動で停止または回避するセンサー機能は必須です。特に全方向(前後左右上下)にセンサーがあるモデルは、事故のリスクを大幅に低減します。 - 耐風性能と飛行安定性
屋根の上空は地上よりも風が強いことが多いため、風に流されずにホバリング(空中停止)できる安定性が求められます。機体が軽すぎると風の影響を受けやすいため、ある程度の重量とモーターパワーが必要です。 - 携帯性と準備の手軽さ
現場ですぐに展開して飛ばせる折りたたみ式のモデルや、セットアップが簡単な機種が実用的です。
衝突事故を防ぐため、全方向障害物検知センサーを搭載したモデルを選びましょう。
【初心者向け】屋根点検におすすめのドローン機種3選
ここでは、一般的に入手しやすく、屋根点検に必要な性能を備えた代表的なモデルを紹介します。
1. DJI Mini 4 Pro
249g未満という軽量設計ながら、全方向障害物検知機能を搭載したモデルです。非常にコンパクトで持ち運びやすく、日本の住宅密集地のような狭いエリアでの運用に適しています。カメラ性能も高く、縦向き撮影にも対応しているため、屋根の勾配に合わせた撮影が可能です。
2. DJI Air 3
中型サイズの機体で、広角カメラと中望遠カメラ(3倍ズーム相当)の2つのカメラを搭載しています。中望遠カメラを使用することで、屋根に近づきすぎずに詳細な映像を撮影できるため、安全性を確保しやすいのが特徴です。耐風性能もMiniシリーズより高く、安定した点検が可能です。
3. DJI Mavic 3 Enterprise シリーズ
より本格的な業務利用を想定する場合の選択肢です。メカニカルシャッターを搭載し、移動しながら撮影しても画像の歪みが少ないほか、モデルによっては赤外線カメラや高倍率ズームカメラを搭載しています。プロレベルの点検業務を目指す場合に適しています。
ドローン購入費用と業者依頼費用の相場
ドローン購入費用
自身で機材を揃える場合、機体本体に加え、予備バッテリー、保険、講習費用などを考慮する必要があります。
- エントリーモデル(DJI Miniシリーズ等):約10万〜15万円程度
- ミドルレンジモデル(DJI Airシリーズ等):約15万〜20万円程度
- 業務用モデル:数十万円〜百万円以上
業者依頼費用
専門業者にドローン点検を依頼する場合の費用は、屋根の形状や面積によって異なりますが、足場を組む従来の点検に比べて安価になる傾向があります。
一般的には、数万円程度から実施可能なケースが多いですが、詳細なレポート作成や画像解析を含む場合は追加費用がかかることもあります。自身で購入して維持管理する手間やリスクを考慮し、頻度が低い場合は業者への依頼がコストパフォーマンスに優れる場合もあります。
ドローンで屋根点検を行うために必要な「資格」と「法規制」
ドローンを飛ばす上で最も重要なのが、法律と資格に関する知識です。「自宅の敷地内だから自由に飛ばしていい」という誤解は禁物です。
ここでは、屋根点検に関わる法規制と資格について詳しく解説します。
屋根点検におけるドローン飛行の法的ルール(航空法・民法など)
ドローンの飛行は航空法によって厳格に規制されています。屋根点検を行う際に特に関係する規制は以下の通りです。
- 人口集中地区(DID地区)での飛行
多くの住宅地は「人口集中地区」に指定されており、このエリアで屋外を飛行させる場合は、国土交通省の許可が必要です。 - 人や物件から30m未満の飛行
ドローンを第三者(操縦者以外の人)や第三者の物件(建物や車など)から30m未満の距離で飛行させる場合も承認が必要です。屋根点検では必然的に建物に接近するため、この規制への対応が必須となります。 - 目視外飛行
モニター画面を見ながら操縦する場合や、屋根の反対側など直接機体が見えない場所を飛行させる場合は「目視外飛行」となり、承認が必要です。
これらの規制対象となる飛行(特定飛行)を行う場合、事前に国土交通省への許可・承認申請を行う必要があります。
【必読】ドローン屋根点検に必要な「資格」の種類と取得方法
結論から述べると、法律上、ドローンによる屋根点検を行うために必須となる資格はありません。
資格は必須ではありませんが、許可申請時の実績証明として非常に有効です。
しかし、資格を持っていない場合でも、特定飛行(DID地区や30m未満の飛行など)の許可申請を行う際には、「10時間以上の飛行実績」や「安全な飛行に必要な知識・能力」を有していることの証明が求められます。
主な資格の種類
- 国家資格(一等・二等無人航空機操縦士)
2022年12月から開始された国家資格です。取得は必須ではありませんが、取得することで飛行許可申請の一部が免除されたり、審査が簡略化されたりするメリットがあります。また、対外的な信頼性の証明にもなります。 - 民間資格(屋根点検ドローンオペレーターなど)
国土交通省認定の管理団体が発行する民間資格です。例えば「屋根点検ドローンオペレーター」といった資格は、屋根点検に特化した技術や知識を習得できるため、実務において推奨されます。
資格取得は必須ではありませんが、安全な運用のための知識習得や、スムーズな許可申請のために、スクール等での講習受講が強く推奨されます。
無許可飛行のリスクと適切な申請手続き
必要な許可を得ずにドローンを飛行させた場合、航空法違反として「50万円以下の罰金」などが科される可能性があります。また、万が一事故を起こした場合、保険が適用されないリスクもあります。
適切な手続きを行うためには、国土交通省が運営する「ドローン情報基盤システム(DIPS 2.0)」を使用します。
ここで機体登録や操縦者情報の登録を行い、飛行計画の通報や許可承認申請を行います。屋根点検を業務として行う、あるいは規制エリア内で実施する場合は、必ずこの手続きを経てから飛行させてください。
ドローン点検を依頼する際の業者選びと点検後の流れ
自分でドローンを操作するのが難しい場合は、プロの業者に依頼するのが確実です。ここでは、信頼できる業者の選び方と、点検後の対応について解説します。
信頼できるドローン屋根点検業者の選び方
業者選びで失敗しないためには、以下のポイントを確認しましょう。
- 飛行許可・承認の取得
日本全国での包括申請など、適切な飛行許可を取得しているかを確認してください。 - 資格と実績
民間資格や国家資格を保有している操縦者が在籍しているか、また屋根点検の実績が豊富かどうかが判断基準になります。 - 保険への加入
万が一、ドローンが落下して家屋や車を傷つけた場合に備え、賠償責任保険に加入している業者を選びましょう。 - 見積もりの明瞭さ
点検費用だけでなく、画像データの提供料や出張費などが明確に記載されているか確認が必要です。
万が一の事故に備え、業者が賠償責任保険に加入しているか必ず確認してください。
点検で異常が見つかった場合の具体的なアクション
ドローン点検で瓦のズレやひび割れ、板金の浮きなどの異常が見つかった場合、次は修理に向けた行動が必要です。
まず、ドローンで撮影した高解像度画像をもとに、被害状況を具体的に把握します。
次に、点検を行った業者が修理も対応している場合はそのまま見積もりを依頼します。点検専門業者の場合は、撮影データを共有して屋根修理業者に見積もりを依頼します。
火災保険の活用と申請の流れ
屋根の損傷が台風や強風などの「風災」によるものであると認められた場合、火災保険が適用され、修理費用が補償される可能性があります。
ただし、単なる「経年劣化」による損傷は保険の対象外です。
ドローンで撮影した画像は、被害状況を保険会社に説明するための客観的な証拠資料として非常に有効です。保険申請を検討する場合は、保険代理店や申請サポートを行っている業者に相談し、適切な手順で申請を行いましょう。
まとめ:ドローンを活用した屋根点検で安心・安全な住まいを
ドローン点検を賢く利用するためのポイント
ドローンによる屋根点検は、足場を組まずに短時間かつ安全に屋根の状態を確認できる画期的な方法です。
定期的に点検を行うことで、大きな被害が出る前にメンテナンスを行うことができ、結果として住宅の寿命を延ばすことにつながります。
自分でドローンを操作して点検を行う場合は、航空法などの法規制を正しく理解し、必要な許可申請を行うことが大前提です。操作に不安がある場合や、詳細な診断が必要な場合は、無理をせず信頼できる専門業者に依頼することをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
Q. ドローン点検は雨の日でもできますか?
A. 基本的に雨天時や強風時は飛行できません。ドローンは精密機器であり、水濡れによる故障や風による墜落のリスクがあるため、天候の良い日に実施する必要があります。
Q. 近隣への挨拶は必要ですか?
A. トラブル防止のため、事前に近隣の方へ「ドローンによる点検を行う」旨を伝えておくことを強くおすすめします。飛行音やプライバシーへの配慮を示すことで、安心して点検を行えます。
Q. 資格がなくても自宅の屋根なら飛ばせますか?
A. 自宅の敷地内であっても、そこが「人口集中地区(DID地区)」であったり、隣家との距離が近かったりする場合は航空法の規制対象となります。必ず事前にエリアを確認し、必要であれば許可申請を行ってください。


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