インフラ点検や災害救助、野生動物の調査など、さまざまな現場で「見えない熱」を可視化する赤外線カメラの需要が高まっています。
特にドローン市場で世界的なシェアを持つDJIの赤外線カメラは、その高い信頼性と操作性から多くのプロフェッショナルに選ばれています。
しかし、DJIの赤外線カメラには、ドローン本体に内蔵されたモデルや、後から搭載する高性能なカメラユニットなど複数の種類が存在します。
「どれを選べばよいかわからない」「どこで購入するのが正解なのか」と迷う方も少なくありません。
本記事では、DJIが提供する赤外線カメラの全製品ラインナップから、基本的な仕組み、目的別の選び方、そして安心して購入できるルートまでを網羅的に解説します。
初心者の方でも自身の用途に最適な一台を見つけられるよう、専門用語を噛み砕いて説明していきます。
DJIの赤外線カメラとは?基礎知識と産業での重要性
DJIの赤外線カメラは、単に映像を記録するだけでなく、対象物の温度情報を取得し、業務の効率化や安全確保に貢献する産業用ツールとして位置づけられています。
まずは、その基本的な仕組みと、なぜ産業分野で重要視されているのかを解説します。
赤外線カメラが捉える「温度」の世界:基礎知識と仕組み
赤外線カメラ(サーマルカメラ)は、物体から放射される「赤外線エネルギー」を検出し、それを温度分布として画像化する装置です。
人間の目には見えない熱を色分けして表示することで、温度の高い部分と低い部分を一目で判別できるようにします。
一般的な可視光カメラが光の反射を捉えるのに対し、赤外線カメラは物体そのものが発する熱を捉えます。
そのため、光が全くない真っ暗な環境や、煙や霧で視界が遮られた状況でも、熱源を鮮明に映し出すことが可能です。
DJIの製品では、この技術がドローンの空撮能力と組み合わされ、上空から広範囲の温度異常を発見するために利用されています。
ドローン用赤外線カメラのメリット:なぜ産業に必要とされるのか
ドローンに赤外線カメラを搭載することで、地上からの調査では困難だった業務が劇的に効率化されます。主なメリットは以下の通りです。
- 広範囲の非接触検査:ソーラーパネルや送電線、ビルの外壁などを上空から撮影し、異常発熱している箇所(ホットスポット)を瞬時に特定できます。
- 夜間の視認性確保:行方不明者の捜索や夜間の警備において、体温を持つ人や動物、車両の熱を検知し、暗闇の中でも対象を発見できます。
- 安全性の向上:人が立ち入るには危険な場所や高所でも、ドローンであれば安全な距離から温度状況を確認できます。
これらのメリットにより、点検業務の時間短縮やコスト削減、人命救助の成功率向上に貢献しています。
目視では発見できない異常を「熱」で可視化することで、事故を未然に防ぐことが可能です。
DJIが提供する赤外線技術:信頼性とイノベーション
DJIは、ドローン機体とカメラジンバル(揺れを補正する装置)を高度に統合する技術を持っています。
DJIの赤外線カメラ製品は、単に熱を映すだけでなく、以下のような特徴を持っています。
- 可視光カメラとの連携:赤外線画像と通常の可視光画像を並べて表示したり、重ね合わせたりすることで、熱源の正確な位置や状況を把握しやすくしています。
- 高度な安定性:飛行中の振動を抑え、遠距離からでもブレのない鮮明な熱画像を取得できます。
- インテリジェント機能:特定の温度範囲のみを強調表示したり、画面内の最高温度・最低温度を自動追尾したりする機能がアプリに統合されています。
公式情報によると、DJIは「Further and Clearer Vision(より遠く、より鮮明な視界)」や「Enhanced Night Vision(強化された暗視機能)」を掲げ、産業用ドローンの主力機能として赤外線技術を進化させています。
【全機種比較】DJI赤外線カメラの製品ラインナップと特徴
DJIの赤外線カメラ製品は、大きく分けて「高性能なカメラユニット(ペイロード)」と「赤外線カメラを内蔵したドローン機体」の2種類が存在します。
ここでは主要なモデルの特徴を整理します。
プロフェッショナル向け高機能モデル(Zenmuse H30T/H20Nなど)
大型の産業用ドローン(Matrice 300 RTKやMatrice 350 RTKなど)に搭載して使用する、交換可能なカメラユニットです。
- Zenmuse H30T
広角カメラ、ズームカメラ、レーザー距離計、近赤外線補助ライトに加え、高解像度の赤外線サーマルカメラを搭載した最新のマルチセンサーカメラです。昼夜を問わず鮮明なデータを取得でき、公共安全やエネルギー検査、林業など幅広い分野に対応します。 - Zenmuse H20N
特に夜間の業務に特化したモデルです。スターライトセンサーを搭載したナイトビジョンカメラと、2つのサーマルカメラ(広角・望遠)を組み合わせることで、極めて暗い環境でも詳細な情報を捉えることができます。
これらのモデルは、非常に高いズーム倍率や多機能性が求められる高度な業務に適しています。
小型・汎用性の高いモデル(Mavic 3 Thermalなど)
機体とカメラが一体化しており、持ち運びやすさと展開の速さを重視したモデルです。
- DJI Mavic 3 Thermal
「Mavic 3 Enterpriseシリーズ」の一つで、折りたたみ可能な小型ボディに640×512ピクセルの赤外線カメラを搭載しています。可視光カメラとの2画面分割表示が可能で、点検や捜索活動において高い機動力を発揮します。 - DJI Matrice 4T
「Matrice 4シリーズ」の赤外線搭載モデルです。Mavic 3 Thermalよりも大型で耐候性が高く、広角・中望遠・望遠カメラ、レーザー距離計、赤外線サーマルカメラを搭載しています。より過酷な環境や長時間飛行が必要な現場に適しています。
機動力を重視するならMavic 3 Thermal、耐候性と飛行時間を重視するならMatrice 4Tがおすすめです。
DJI赤外線カメラ製品スペック比較表:目的別最適な一台を見つける
主要な赤外線対応製品のスペック概要を整理します。
| モデル | タイプ | 赤外線解像度 | 特徴 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|---|
| Mavic 3 Thermal | 小型一体型 | 640×512 | 携帯性抜群、展開が早い | 建物点検、小規模捜索 |
| Matrice 4T | 中型一体型 | 640×512 | 高い耐候性、多眼カメラ | インフラ点検、広域警備 |
| Zenmuse H30T | 大型機用ペイロード | 1280×1024 | 圧倒的な解像度とズーム | 大規模プラント、詳細点検 |
※詳細な数値はファームウェア更新等により変動する場合があるため、導入時は必ず公式スペックシートをご確認ください。
目的別!DJI赤外線カメラの選び方と具体的な活用シーン
赤外線カメラを選ぶ際は、単にスペックが高いものを選ぶのではなく、「何を」「どのような環境で」撮影するかによって最適なモデルが異なります。
用途で選ぶ:公共安全、インフラ点検、農業・林業など
- 公共安全・防災(人命救助・火災現場)
迅速な展開が求められるため、Mavic 3 Thermalのような小型機が第一陣として有効です。長時間・広範囲の捜索が必要な場合は、Matrice 4TやMatrice 350 RTK + Zenmuse H30Tが選ばれます。 - インフラ点検(ソーラーパネル・外壁・送電線)
異常発熱(ホットスポット)を正確に見つける必要があります。小規模な設備ならMavic 3 Thermalで十分ですが、高圧送電線など接近が難しい対象には、高倍率ズームと高解像度赤外線を持つZenmuse H30Tが適しています。 - 農業・林業(鳥獣被害対策・森林調査)
夜間に活動する野生動物(鹿や猪など)の特定には、赤外線カメラが必須です。機動力が高いMavic 3 ThermalやMatrice 4Tが、山間部での持ち運びや運用において有利です。
性能・機能で選ぶ:解像度、ズーム、レーザー距離計の有無
赤外線解像度は、一般的に640×512ピクセルあれば、業務用途として十分な画質が得られます。
より微細な温度差や遠くの対象を鮮明に見たい場合は、Zenmuse H30Tのような1280×1024クラスの高解像度モデルを検討します。
また、対象までの正確な距離や位置座標を把握したい場合、レーザー距離計搭載モデル(Matrice 4T、Zenmuse H30Tなど)を選ぶことで、地図上での位置特定が容易になります。
対応ドローンと運用のしやすさで選ぶ
カメラ性能だけでなく、それを運ぶドローンの運用性も重要です。
- 一人で手軽に運用したい:バックパックに入るMavic 3 Thermalが最適です。準備から離陸まで数分で完了します。
- 悪天候や長時間飛行が必要:防塵防滴性能が高く、バッテリー交換システムが充実しているMatriceシリーズ(Matrice 4TやMatrice 350 RTK)が安心です。
大型機は重量があるため、運搬手段や運用体制も含めて検討する必要があります。
DJI赤外線カメラの賢い購入方法:正規販売店・オンラインストア徹底比較
DJIの産業用製品(Enterpriseシリーズ)は、一般的な家電量販店では取り扱いが限られている場合があります。適切なサポートを受けるためにも、購入ルートの選定は重要です。
DJI正規代理店のメリット:セキドなど専門ショップ
産業用ドローンや赤外線カメラを購入する場合、最も推奨されるのはDJI認定の正規代理店(一次代理店など)です。日本では「株式会社セキド」などが有名です。
- 専門的なコンサルティング:業務内容に合わせて最適な機種やオプション構成を提案してくれます。
- デモ・講習会:実機を用いたデモフライトや、導入前の相談会を実施していることが多く、購入前に性能を確認できます。
- アフターサポート:業務利用で発生するトラブルや修理、定期点検の窓口として機能し、迅速な対応が期待できます。
オンラインストアでの購入:ヨドバシ・楽天などの選び方
大手家電量販店のオンラインサイト(ヨドバシ.comなど)や楽天市場でもDJI製品は販売されています。
ポイント還元や、使い慣れた決済方法が利用できる点がメリットで、Mavic 3シリーズなどの小型機やバッテリーなどの消耗品購入には便利です。
産業用モデルは「取り寄せ」扱いが多く、即納されない場合があるため納期確認が必須です。
購入時に確認すべきサポート体制と保証
赤外線カメラ搭載機は高額な精密機器です。購入時には以下の保証サービスへの加入を強く推奨します。
- DJI Care Enterprise:DJIが提供する包括的な保証プランです。衝突や水没などの事故が発生した際、少額の追加料金でリフレッシュ品(新品同等品)と交換できるサービスです。産業用ドローンでは、このプランへの加入が運用の前提となるケースがほとんどです。
- 定期点検サービス:長く安全に使用するために、代理店やメーカーが提供する定期メンテナンスサービスの有無も確認しておきましょう。
DJI赤外線カメラ導入後の成功事例と運用のポイント
実際にDJIの赤外線カメラを導入し、成果を上げている事例と、運用上のポイントを紹介します。
課題解決に貢献!産業別の導入成功事例
- ソーラーパネル点検:広大なメガソーラーにおいて、従来は検査員が歩いて点検していましたが、赤外線カメラ搭載ドローンを導入することで、ホットスポット(故障箇所)の発見効率が飛躍的に向上しました。
- 建物外壁診断:赤外線カメラで外壁タイルの浮きや剥離による温度変化を検知。足場を組むことなく初期診断が可能になり、コスト削減と工期短縮を実現しています。
- 鳥獣被害対策:夜間に農地へ侵入する鹿や猪を上空から赤外線カメラで特定。そのデータを元に罠の設置場所を最適化し、捕獲効率を向上させた事例があります。
高精度なデータ活用のための運用ノウハウ
赤外線カメラのデータを正しく活用するには、いくつかのコツがあります。
まず撮影条件の選定が重要です。外壁点検などは、日照によって温度差が出やすい時間帯を選ぶ必要があります。逆に、漏水調査などは気温が下がった夜間の方が適している場合があります。
また、熱画像だけでは場所の特定が難しい場合があるため、必ず可視光カメラでも同時に撮影し、比較できるようにしておきます。DJIのアプリには、これらを並べて表示する機能が備わっています。
長く安心して使うためのメンテナンスとサポート
赤外線カメラのレンズ(ゲルマニウムレンズなど)は非常にデリケートです。
- レンズの保護:傷がつくと正確な温度計測ができなくなるため、運搬時は必ずカバーを装着します。
- ファームウェアの更新:DJIは定期的に機能向上やバグ修正のためのアップデートを提供しています。常に最新の状態に保つことで、トラブルを未然に防げます。
- 専門家への相談:測定値に異常を感じたら、自己判断せず購入した代理店やサポート窓口に相談することが重要です。
レンズに傷がつくと修理が高額になるため、取り扱いには細心の注意を払いましょう。
まとめ
DJIの赤外線カメラは、目に見えない熱情報を可視化し、点検、救助、調査といった業務のあり方を大きく変える強力なツールです。
- 製品選び:手軽な「Mavic 3 Thermal」、バランスの良い「Matrice 4T」、最高性能の「Zenmuse H30T」など、用途と予算に合わせて選定しましょう。
- 購入方法:専門的なアドバイスや手厚いサポートが受けられる「正規代理店」での相談・購入が最も安心です。
- 運用:適切な保証プラン(DJI Care Enterprise)に加入し、定期的なメンテナンスを行うことで、長く安全に活用できます。
まずは、ご自身の業務で「何を見たいのか」を明確にし、お近くの正規代理店で実機デモや相談会に参加してみることをおすすめします。
最適な一台が見つかれば、業務の効率と安全性は確実に向上するはずです。


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