ビジネスの現場でドローンの活用が進む中、DJIの産業用ドローン「Matrice(マトリス)」シリーズが大きな注目を集めています。
特に最新の「Matrice 4」シリーズは、従来の常識を覆す飛行性能とデータ取得能力を備え、測量や点検業務の効率を劇的に向上させる可能性を秘めています。
しかし、導入を検討する担当者にとって、「Mavic(マビック)」シリーズとの違いや、具体的な費用対効果が見えにくいという課題も少なくありません。
「自社の業務にはどちらが最適なのか?」「高額な投資に見合うリターンはあるのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、DJI Matriceシリーズの全体像から、最新モデル「Matrice 4」シリーズの詳細スペック、そしてMavicシリーズとの徹底比較までを分かりやすく解説します。
専門的な用語も噛み砕いて説明しますので、初めて産業用ドローンを検討する方も安心して読み進めてください。
DJI Matrice(マトリス)シリーズとは?産業用ドローンの最前線
DJI Matriceシリーズは、過酷な環境下での業務遂行を前提に設計された、産業用ドローンのフラグシップモデルです。
趣味や空撮を主目的とするコンシューマー機とは異なり、防塵・防水性能や高度なセンサー、長時間飛行能力を備えています。
人命救助、インフラ点検、精密測量など、失敗の許されない現場で活躍しています。
Matriceシリーズのコンセプトとターゲットユーザー
Matriceシリーズは、「現場の課題をテクノロジーで解決する」ことをコンセプトに開発されています。
主なターゲットユーザーは、建設、土木、エネルギー(電力・石油)、公共安全(警察・消防)、農業などの専門分野です。
特に最新の「Matrice 4」シリーズは、コンパクトでありながら高度なインテリジェント機能を搭載したモデルとして位置づけられています。
- Matrice 4E:測量、マッピング、土木建設、採掘現場など、正確な空間データが必要な業務向け。
- Matrice 4T:電力設備の点検、救命救助、公共安全、森林保全など、熱画像(サーマル)情報やズーム機能が必要な業務向け。
このように、用途に合わせて特化したモデル展開が行われているのが特徴です。
主要モデル「Matrice 30シリーズ」「Matrice 350 RTK」の特徴
Matriceシリーズには、用途に応じた複数のラインナップが存在します。ここでは、Matrice 4以外の主要モデルについて整理します。
Matrice 30シリーズ
携帯性と高性能をバランスよく両立したモデルです。バックパックに収まるサイズ感でありながら、最大飛行時間41分、風圧抵抗12m/s、IP55等級の防塵・防水性能を誇ります。
43MP広角カメラや50倍ズームカメラ、レーザー距離計を搭載し、機動力が求められる現場で重宝されています。
Matrice 350 RTK
大型で拡張性の高いプラットフォームです。詳細なスペックは構成により異なりますが、複数のペイロード(カメラやセンサー)を同時に搭載できるなど、複雑なミッションに対応可能な設計となっています。
Matrice 400
さらに大型のモデルで、最大59分の飛行時間と最大6kgのペイロード能力を持ちます。LiDAR(レーザー測量機)やミリ波レーダーなど、重量のある高度な機器を搭載しての長時間運用が可能です。
Matriceシリーズは、機動力重視から大型積載まで、業務要件に応じた幅広いラインナップを展開しています。
Matrice 4シリーズの革新的な性能と機能【産業用途特化】
最新モデルである「Matrice 4」シリーズは、従来の産業用ドローンの課題であった「飛行時間」と「通信安定性」を大幅に強化しています。
ここでは、その具体的な技術的優位性を解説します。
最先端のカメラ・センサーシステム
Matrice 4シリーズは、業務用途に最適化された高性能なカメラとセンサーを標準搭載しています。
Matrice 4E(測量向け)
4/3型CMOSセンサーを搭載した20MP(2000万画素)の広角カメラを採用しています。
メカニカルシャッターを備え、高速移動中でも歪みのない鮮明な写真を撮影できるため、高精度な地図作成や3Dモデル生成に最適です。
Matrice 4T(点検・調査向け)
広角カメラに加え、サーマル(熱画像)カメラや高倍率ズームカメラを搭載しています。
これにより、夜間の捜索活動や、送電線の異常発熱箇所の特定などが可能になります。
また、両モデルともに「レーザー距離計」を標準搭載しており、対象物までの距離や位置情報を正確に把握することができます。
圧倒的な飛行性能と安全性
現場での運用において最も重要なのが、飛行性能と安全性です。Matrice 4シリーズは以下の点で進化しています。
- 飛行時間の延長
最大飛行時間は49分に達します。これは、競合となるMavic 3 Enterpriseシリーズと比較しても長く、一度の飛行でより広範囲のデータを取得できることを意味します。 - 伝送距離の拡大
映像伝送システムが強化され、最大伝送距離は12kmを実現しています。遠隔地や障害物の多い現場でも、安定した映像確認と操縦が可能です。 - 耐環境性能
最大風圧抵抗12m/sに加え、-10℃から40℃の環境下でも動作可能です。全方向障害物回避センサーも備えており、複雑な地形でも安全に飛行できます。
バッテリー交換の手間が減ることで、現場でのダウンタイムを削減し、業務効率が大幅に向上します。
業務を効率化するインテリジェント機能
ハードウェアだけでなく、ソフトウェア面でも業務効率化機能が充実しています。
Smart 3D Capture
指定した範囲を自動で撮影し、現場で即座に点群データ(3Dデータのもと)を生成する機能などが搭載されています。
これにより、撮影漏れを防ぎ、精密な飛行ルートを自動生成して再撮影を行うといった高度な運用が可能になります。
RTKモジュール標準搭載
GPSなどの衛星測位システムに加え、より高精度な位置情報を取得する「RTK(リアルタイムキネマティック)」モジュールを標準で搭載しています。
これにより、センチメートル単位の正確なホバリングや写真への位置情報付与が可能です。
【徹底比較】Matrice 4シリーズ vs DJI Mavic 4/Enterpriseシリーズ
多くの企業担当者が悩むのが、「Matrice 4」と「Mavic」シリーズのどちらを選ぶべきかという点です。
ここでは、現行の産業用小型機である「Mavic 3 Enterprise」シリーズ(および将来的なMavic 4)と比較しながら、選び方の基準を解説します。
携帯性・導入コスト・運用コストの違い
携帯性
Mavicシリーズは折りたたみ可能で非常にコンパクトであり、手軽に持ち運べる点が最大のメリットです。
一方、Matrice 4シリーズもコンパクト化が進んでいますが、Mavicに比べると機体サイズや重量は大きくなる傾向にあります。
コスト感
一般的に、Mavicシリーズの方が本体価格・導入コストは安価に設定されています。Matriceシリーズはより専門的なセンサーや堅牢性を備えている分、導入コストは高くなります。
測量・点検・公共安全など用途別の最適な選択肢
Matrice 4シリーズが向いているケース
- 広範囲の測量・点検: 最大49分の飛行時間と12kmの伝送距離を活かし、広大な現場を一気にカバーしたい場合。
- 複雑なデータ取得: レーザー距離計やRTK精度が必須となる精密な業務。
- 過酷な環境: 風が強い場所や、通信環境が悪い山間部などでの運用。
Mavic Enterpriseシリーズが向いているケース
- 迅速な初動対応: 現場到着後、すぐに取り出して飛ばす必要がある警察・消防の初動活動。
- 小規模〜中規模の現場: 建物の屋根点検や、狭い範囲の簡易測量。
- 予算重視: 導入コストを抑えつつ、産業用ドローンの基本機能を活用したい場合。
広範囲・高精度なデータが必要ならMatrice、機動力とコストを重視するならMavicが最適解です。
拡張性・堅牢性・専門機能による性能差
Matrice 4シリーズは、Mavic 3 Enterpriseシリーズと比較して以下の点で性能差があります。
- 飛行時間: Matrice 4(49分) > Mavic 3 Enterprise(45分)
- 伝送距離: Matrice 4(12km) > Mavic 3 Enterprise(8km)
- センサー: Matrice 4はレーザー距離計などを標準で統合しており、より高度な計測が可能です。
Matriceシリーズは「小型業務用ドローン」として、Mavicシリーズよりも一段階上の業務要件に応える設計となっています。
Matrice 4シリーズの導入費用と費用対効果(ROI)
産業用ドローンは決して安い買い物ではありません。導入にあたっては、コストとそれに見合う効果を慎重に検討する必要があります。
本体価格と周辺アクセサリー・ソフトウェアの目安
Matrice 4シリーズの具体的な本体価格については、公式サイト等で一般公開されておらず、正規代理店への見積もりが必要となるケースが一般的です。
導入時には、機体本体だけでなく、以下の周辺機器やソフトウェアの費用も考慮する必要があります。
- 予備バッテリー(長時間運用のために複数セット必要)
- 充電ステーション
- RTK基地局(高精度測量を行う場合)
- 解析用ソフトウェア(DJI Terraなど)
- 保守サービスプラン(DJI Care Enterpriseなど)
具体的な導入事例から見る費用対効果の試算
具体的な金額データは公開されていませんが、一般的に産業用ドローン導入による費用対効果は以下のような観点で試算されます。
- 人件費の削減: 従来、数人がかりで数日かけていた測量業務が、ドローンなら数時間で完了するケースがあります。
- 安全性の向上: 足場を組んで人が登っていた高所点検をドローンが代替することで、転落事故のリスクをゼロにし、足場設置コストも削減できます。
- ダウンタイムの短縮: 工場の設備点検などを短時間で済ませることで、稼働停止時間を最小限に抑えられます。
導入前に確認すべき補助金・助成金制度
ドローンの導入には、国や自治体の補助金・助成金が活用できる場合があります。
- ものづくり補助金: 生産性向上に資する設備投資として。
- IT導入補助金: 業務効率化のためのITツール導入として。
- 人材開発支援助成金: ドローン操縦者の育成訓練費用として。
補助金制度は年度や地域によって公募状況が異なるため、導入検討時に必ず最新情報を確認してください。
失敗しないMatrice 4シリーズの選び方と導入ステップ
最後に、Matrice 4シリーズをスムーズに導入し、運用を開始するためのステップを解説します。
導入目的と予算に合わせたモデル選定のポイント
まず、「何を撮りたいか」「どのようなデータが欲しいか」を明確にしましょう。
- 正確な地図や図面が欲しい → Matrice 4E(メカニカルシャッター搭載)
- 夜間の捜索や設備の熱異常を見たい → Matrice 4T(サーマルカメラ搭載)
予算については、機体価格だけでなく、パイロットの育成費用や保険料、メンテナンス費用も含めたトータルコストで考えることが重要です。
ドローン運用に必要な法規制と許可申請の基礎知識
業務でドローンを飛ばす場合、航空法をはじめとする各種法令の遵守が必須です。
- 機体登録: 国土交通省への機体登録とリモートIDの搭載。
- 飛行許可承認申請: 人口集中地区(DID)の上空や、目視外飛行などを行う場合は事前の許可が必要です。
- レベル4飛行: 有人地帯での目視外飛行を行う場合は、第一種機体認証を受けた機体と一等無人航空機操縦士の資格が必要です。
Matriceシリーズは高い安全性能を持っていますが、法令に基づいた適切な運用計画が求められます。
購入後のサポート体制とメンテナンス、データ管理
産業用ドローンは精密機器であり、定期的なメンテナンスが欠かせません。購入時は、以下のサポート体制が整っている代理店を選ぶと安心です。
- 代替機の貸出: 修理中に業務を止めないためのサービス。
- 定期点検パック: メーカー推奨の点検を受けられるプラン。
- 講習会: 運用担当者向けの操縦・安全講習。
取得した膨大なデータをどのように保存・管理・共有するか、セキュリティポリシーも含めて事前に決めておくことが重要です。
まとめ
DJI Matrice 4シリーズは、産業用ドローンの新たなスタンダードとして、飛行時間、伝送距離、カメラ性能のすべてにおいて高いレベルを実現しています。
- Matrice 4Eは測量・マッピング業務に特化。
- Matrice 4Tは点検・捜索救助業務に特化。
- Mavicシリーズと比較して、より広範囲・長時間・高精度な業務に適している。
導入にあたっては、自社の業務課題を明確にし、Mavicシリーズの手軽さとMatriceシリーズの高性能さを比較検討することが重要です。
適切なモデルを選定し、法規制を遵守しながら運用することで、業務効率の大幅な向上とコスト削減が実現できるでしょう。


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