ドローン市場において、独自の存在感を放ち続けるフランスのメーカー「Parrot(パロット)」。
かつてはホビー用ドローンのパイオニアとして知られていましたが、現在は高度な技術を搭載した産業用・プロフェッショナル向けモデルへと主軸を移しています。
「セキュリティの高さ」や「携帯性」で評価されるParrotドローンですが、具体的にどのようなモデルがあり、価格はどれくらいなのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Parrotドローンの全体像から、現行モデルの特徴やスペック、気になる価格までを網羅的に解説します。
初心者から業務利用を検討するプロフェッショナルまで、目的に合った最適な一台を見つけるための判断材料としてお役立てください。
Parrot(パロット)ドローンとは?メーカーの概要と製品の魅力
ドローンを選ぶ際、メーカーの背景や設計思想を知ることは、製品の信頼性を判断する上で重要です。
まずはParrotという企業と、そのドローンの特徴について解説します。
ヨーロッパ発の老舗ドローンメーカー「Parrot」の歴史と哲学
Parrotは1994年にフランスで設立されたテクノロジー企業です。
当初はワイヤレス関連機器を扱っていましたが、2010年にスマートフォンで操作できる画期的なドローン「AR.Drone」を発表し、コンシューマー向けドローン市場を切り開きました。
Parrotの製品哲学には、常に「革新性」と「使いやすさ」があります。
複雑な操作を自動化し、誰もが直感的に扱えるインターフェースを追求してきました。
近年では、コンシューマー市場で培った小型化・軽量化の技術を活かし、産業用ドローン分野でのソリューション提供に注力しています。
Parrotドローンの特徴:高いセキュリティとプロフェッショナル用途への特化
現在のParrotドローンの最大の特徴は、「高度なセキュリティ」と「産業用途への特化」です。
特にデータの取り扱いに厳格なヨーロッパ基準(GDPRなど)に準拠しており、撮影データや飛行ログが意図せず外部サーバーへ送信されることを防ぐ設計がなされています。
情報漏洩リスクを懸念する政府機関やインフラ点検の現場で高く評価されています。
また、他社の産業用ドローンと比較して非常にコンパクトで、現場へ手軽に持ち運べる点も大きな魅力です。
【知っておきたい】Parrotドローンの主要シリーズ(ANAFIシリーズを中心に概要紹介)
現在、Parrotのドローンラインナップの中核を担っているのが「ANAFI(アナフィ)」シリーズです。
- ANAFI Ai:4G通信に対応し、目視外飛行や複雑な環境での自律飛行を強化した次世代モデル。
- ANAFI USA:米国陸軍向けに開発された技術をベースにした、高耐久・高セキュリティモデル。
- ANAFI Thermal:赤外線カメラを搭載し、点検や救助活動に特化したモデル(現在は後継機への移行が進んでいます)。
かつて人気を博した「Bebop」や「Mambo」といったホビー向けシリーズは生産を終了しており、現在はこれらのANAFIシリーズがParrotの技術力を象徴する製品となっています。
【価格付き】現行Parrotドローン全モデル徹底比較!
ここでは、現在主に入手可能なParrotの産業用・プロ向けドローンのスペックと価格について詳しく解説します。
価格は為替や代理店により変動するため、導入時は必ず見積もりが必要です。
ANAFI Ai:自律飛行AI搭載の最先端プロフェッショナルモデル
「ANAFI Ai」は、ドローン業界で初めて4G接続をメインの通信手段として統合したモデルです。
Wi-Fiの電波が届きにくい場所や、遮蔽物の多い環境でも安定した通信を維持しやすい設計になっています。
【主な特徴】
- 4G常時接続:既存の携帯電話通信網を利用し、広範囲でのデータ伝送が可能。
- 4800万画素カメラ:高精細な静止画と4K/60fpsの動画撮影が可能。
- 障害物回避システム:ステレオカメラによる全方向の障害物検知と回避機能を搭載。
- オープンソース:開発者向けにSDKが公開されており、用途に応じたアプリ開発が可能。
【価格の目安】
約 600,000円 ~ 800,000円 前後
※海外定価は4,000ドル台からですが、日本国内では代理店経由での販売となり、サポート費などが含まれる場合があります。
ANAFI USA:堅牢性とセキュリティを両立した高耐久モデル
「ANAFI USA」は、その名の通りアメリカ陸軍の短距離偵察用ドローンプログラムのために開発された技術をベースにしています。
極めて高いセキュリティ性能と、過酷な環境でも動作する耐久性が売りです。
【主な特徴】
- 32倍ズーム:遠くからでも被写体を鮮明に捉えることができ、詳細な点検が可能。
- サーマルカメラ搭載:FLIR社製の赤外線カメラを内蔵し、熱源の特定が可能(人命救助やソーラーパネル点検など)。
- IP53準拠:防塵・防雨性能を持ち、悪天候下でも飛行可能。
- データ暗号化:SDカードのAES-XTS暗号化など、紛失時の情報漏洩対策が徹底されています。
【価格の目安】
約 1,100,000円 ~ 1,300,000円 前後
※海外定価は7,000ドル台から。高度なセンサー類を搭載しているため、100万円を超える価格帯となります。
ANAFI Thermal:熱画像と可視光で点検・監視に貢献
「ANAFI Thermal」は、通常の4Kカメラに加え、熱を可視化するサーマルカメラを搭載した軽量折りたたみドローンです。
ANAFI USAよりも安価で導入しやすく、建築物の断熱診断や野生動物の調査などに利用されてきました。
【主な特徴】
- デュアルカメラ:可視光カメラとサーマルカメラの映像を合成・切り替え可能。
- 軽量コンパクト:重量はわずか315gで、ポケットに入るサイズ感。
- 180度チルトジンバル:カメラを真上に向けることができ、橋梁の裏側などの点検に有利。
【価格の目安】
約 250,000円 ~ 350,000円 前後(流通在庫のみの可能性あり)
※現在はANAFI USAやANAFI Aiへの移行が進んでおり、新品の入手が難しくなりつつあります。
その他のANAFIシリーズおよび関連モデル
一般ユーザーが「Parrotドローン」と聞いてイメージするかもしれない、過去のコンシューマー向けモデルについても触れておきます。
- ANAFI(初代・4Kモデル):4K HDRカメラを搭載した空撮用ドローン。非常に静音性が高く画質も優秀でしたが、現在は生産終了しています。中古市場では5万~8万円程度で取引されることがあります。
- Mambo / Swing:手のひらサイズのミニドローン。教育用やホビー用として人気でしたが、こちらも生産終了しています。
現在、Parrot公式サイトのラインナップは「ANAFI Ai」と「ANAFI USA」の2機種がメインとなっており、同社が完全にプロフェッショナル市場へ舵を切ったことがわかります。
Parrotドローンが選ばれる3つの理由と独自の強み
DJIなどの競合メーカーが存在する中で、なぜParrotが選ばれるのでしょうか。そこには明確な3つの理由があります。
高いサイバーセキュリティとデータ保護(GDPR準拠など)
Parrotは欧州企業であるため、EUの厳格な一般データ保護規則(GDPR)に準拠しています。
ユーザーの同意なしにデータがクラウドへ送信されることはありません。
この「信頼性」は、機密情報を扱う官公庁やインフラ企業にとって、機体性能以上に重要な選定基準となります。
オープンソースSDKと高いカスタマイズ性
Parrotはソフトウェア開発キット(SDK)をオープンに公開しています。
これにより、企業や研究機関は自社の業務フローに合わせて、ドローンの飛行プログラムやデータ処理アプリを独自に開発・カスタマイズすることができます。
特定の業務に特化させたいプロフェッショナルにとって、この自由度は大きな魅力です。
堅牢性と運用安定性、プロフェッショナルなニーズへの対応
ANAFI USAに代表されるように、防塵・防雨性能や耐風性能が高く設計されています。
プロペラ音が他社機に比べて静かで、騒音に配慮が必要な現場でも運用しやすいのが特徴です。
用途別・スキルレベル別!あなたに最適なParrotドローンは?
Parrotの現行ラインナップはプロ向けが中心ですが、ユーザーの目的によって最適な選択肢は異なります。
【初心者・趣味】手軽に始めたい人におすすめの選び方
正直なところ、現在新品で入手できるParrot製ドローンは高額な産業機が中心のため、純粋な「趣味」として購入するのはハードルが高いのが現状です。
選び方
もしParrotのデザインや静音性に惹かれて趣味で飛ばしたい場合は、中古市場で「ANAFI(初代)」を探すのがおすすめです。4K撮影が可能で、操作もスマホで簡単に行えます。
中古品はバッテリー劣化やサポート終了のリスクがあるため、状態をよく確認しましょう。
【空撮・映像制作】高品質な映像を求める人へ
映像制作の現場で、特に「真上のアングル」や「狭い場所での撮影」が必要な場合にParrot機は活躍します。
おすすめ:ANAFI Ai
4800万画素の大型センサーを搭載しており、画質が非常に高いです。
また、4G接続により障害物の多い場所でも映像伝送が途切れにくいため、複雑な構図の撮影に挑戦できます。
【産業・業務利用】測量・点検・警備などプロフェッショナル向け
業務利用こそが、現在のParrotドローンの本領発揮エリアです。
- 点検・調査:ANAFI USA または ANAFI Thermal
サーマルカメラが必要なソーラーパネル点検、外壁診断、夜間の捜索活動に最適です。特にANAFI USAはズーム機能が強力なため、対象物に接近しすぎずに詳細を確認できます。 - 測量・マッピング:ANAFI Ai
写真測量(フォトグラメトリ)に適したカメラ性能と、自律飛行機能を備えています。4G通信を活用し、広範囲のデータを効率よくクラウドへアップロードするワークフローが構築可能です。
Parrotドローンの購入から運用まで:知っておきたいポイント
高機能なドローンを導入するにあたり、購入方法や法規制についても理解しておく必要があります。
Parrotドローンの購入方法と正規販売店(オンライン、代理店など)
現行の産業用モデル(ANAFI Ai, ANAFI USA)は、家電量販店ではほとんど取り扱われていません。
- 正規代理店:日本国内にはParrot製品を扱う産業用ドローン専門の代理店がいくつか存在します。導入相談、見積もり、アフターサポートを含めて依頼できるため、最も確実なルートです。
- オンラインストア:一部の専門店がオンラインで販売している場合もありますが、高額商品のため、保証内容を事前に確認することをおすすめします。
ドローン飛行に関する日本の法規制と注意点(航空法、電波法、プライバシーなど)
Parrotドローンは100g以上の機体がほとんどであるため、日本の航空法の規制対象となります。
- 機体登録:国土交通省のシステムで機体登録を行い、リモートID機能を有効にする必要があります(ANAFI Aiなどは対応済み)。
- 飛行許可承認:人口集中地区(DID)の上空や、夜間飛行、目視外飛行を行う場合は、事前に国の許可・承認が必要です。
並行輸入品は日本の技適マークがない可能性があるため、必ず国内正規代理店品を選びましょう。
長く安全に使うためのメンテナンスとサポート情報
産業用ドローンは定期的なメンテナンスが不可欠です。
バッテリー管理
リチウムイオンバッテリーは保管状況により劣化します。長期間使わない場合は50%程度の充電量で保管しましょう。
ファームウェア更新
Parrotは機能改善やセキュリティ向上のため、定期的に更新プログラムを配信しています。飛行前にはアプリ(FreeFlight 7など)を通じて最新の状態にしておくことが重要です。
まとめ
Parrotドローンは、ホビー用途から高度な産業用途へと進化を遂げ、現在は「セキュリティ」と「実用性」を兼ね備えたプロフェッショナルなツールとして確立されています。
Parrotドローンは進化を続けるプロフェッショナルな選択肢
4G通信による自律飛行を実現した「ANAFI Ai」や、軍事レベルの耐久性を持つ「ANAFI USA」など、Parrotの製品は常に時代の最先端技術を取り入れています。
特にデータの安全性を重視するユーザーにとって、これほど信頼できる選択肢は他にないと言っても過言ではありません。
目的と予算に合わせた最適なモデルを選び、安全にフライトを楽しもう
導入コストは決して安くはありませんが、それに見合うだけの性能と安心感がParrotドローンにはあります。
業務効率化を目指す企業や、特殊な撮影に挑戦したいクリエイターの方は、ぜひParrotドローンの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
自身の目的と予算を明確にし、信頼できる代理店に相談することで、最適な一台と巡り会えるはずです。


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