2016年頃、ドローン市場に「ポケットに入る高性能ドローン」として登場し、大きな話題を呼んだ製品があります。
それがZEROTECH(ゼロテック)社の「DOBBY(ドビー)」です。
当時としては画期的な小型軽量ボディと、スマートフォンで手軽に自撮りができる「セルフィードローン」というコンセプトは、多くのガジェットファンを魅了しました。
本記事では、DOBBYドローンの基本情報や詳細なスペック、発売当時の市場への影響力について解説します。
また、生産終了となった現在における入手方法や、中古品を購入する際のリスク、アプリの互換性といった注意点についても詳しく掘り下げます。
DOBBYドローンとは?「手のひらセルフィードローン」の魅力と歴史
「空飛ぶ自撮り棒」というコンセプトで、専門知識不要の手軽さを実現しました。
DOBBYドローンは、中国のZEROTECH社が開発し、2016年に発売された小型の折りたたみ式ドローンです。
本格的な空撮用ドローンが大型で高価だった時代に、スマートフォン感覚で持ち運べる手軽さを提案し、ドローンの大衆化に貢献したモデルの一つです。
DOBBYドローンの基本情報と革新的なコンセプト
DOBBYの最大の特徴は、プロペラアームを折りたたむことでポケットに収まるサイズ感にあります。
スマートフォンとほぼ同等の大きさになるこの機体は、専用のコントローラー(プロポ)を必要とせず、スマートフォンのアプリだけで操縦が可能でした。
「空飛ぶ自撮り棒」とも称されたDOBBYは、高度な操縦技術を持たないユーザーでも、顔認識機能や自動追尾機能を使って簡単に空撮セルフィー(自撮り)ができることをコンセプトにしていました。
Qualcomm(クアルコム)製のSnapdragonプロセッサを搭載し、画像処理や安定飛行のための演算を小型ボディで行っていた点も、当時としては非常に先進的でした。
登場時の背景と「セルフィードローン」としてのヒット
DOBBYが登場した2016年当時、ドローン市場はDJIのPhantomシリーズなどが主流であり、機体は大きく、持ち運びには専用のバックパックが必要でした。
また、日本国内においては航空法の規制対象となる重量ラインが「200g以上」であったため、重量199g(バッテリー含む)で設計されたDOBBYは「模型航空機」として扱われ、飛行可能な場所が比較的多いという法的なメリットがありました。
この「200g未満」という規格と、ポケットサイズの手軽さが相まって、DOBBYは日本国内でも大きなヒットを記録しました。
ガジェット好きだけでなく、旅行先で手軽に空撮を楽しみたい一般層にも受け入れられ、「セルフィードローン」というジャンルを確立するきっかけとなりました。
※注:2022年6月20日以降、航空法の規制対象は「100g以上」に引き下げられました。現在DOBBYを飛行させる場合は、無人航空機としての登録および航空法の遵守が必要です。
小型ながら充実した主要機能をわかりやすく解説
DOBBYは小型ながら、GPSとGLONASSという2つの衛星測位システムに対応しており、屋外での安定したホバリングを実現していました。
また、屋内やGPS信号の届かない場所でも安定して飛行できるよう、機体底面にオプティカルフローセンサーと超音波センサーを搭載しています。
さらに、音声コントロールや、手のひらからの離着陸(パームテイクオフ・ランディング)など、ユーザーフレンドリーな機能も多数搭載されていました。
これらの機能は、現在の最新ドローンでは標準的になっていますが、DOBBYはその先駆けとして実装していたのです。
「dobby ドローン スペック」徹底解説!詳細な性能と機能
4Kカメラを搭載していますが、手ブレ補正使用時はフルHD画質になる点に注意してください。
ここでは、DOBBYドローンの具体的な性能について掘り下げます。「dobby ドローン スペック」として検索されることの多い、飛行性能やカメラ性能について整理します。
主要スペック一覧(飛行性能・カメラ・サイズ・重量など)
DOBBYの主な仕様は以下の通りです。
- 重量:約199g(バッテリー含む)
- サイズ(折りたたみ時):135mm × 67mm × 36.8mm
- サイズ(展開時):135mm × 145mm × 36.8mm
- 最大飛行時間:約9分(環境により変動)
- カメラセンサー:1/3.06インチ CMOS、有効画素数1300万画素
- 動画解像度:最大4K/30fps(電子手ブレ補正使用時は1080p/30fpsで記録)
- 測位システム:GPS / GLONASS
- 制御距離:最大100m(Wi-Fi接続、環境による)
特筆すべきは、4K撮影が可能なカメラを搭載している点ですが、電子式手ブレ補正(EIS)を使用すると画角がクロップ(切り取り)され、出力される動画はフルHD(1080p)となります。
搭載されていた便利な撮影機能と操縦モード
DOBBYには、初心者でも映画のような映像を撮るためのインテリジェントな撮影モードが搭載されていました。
- ショートビデオモード:10秒、30秒、60秒などの短い動画を自動で撮影し、SNSへの共有を容易にする機能。
- ターゲット追尾:指定した被写体(人や物)を認識し、自動で追従して撮影する機能。
- 顔認識:人の顔を認識してピントを合わせ続け、セルフィー撮影を補助する機能。
- 連写モード:決定的瞬間を逃さないための写真連写機能。
これらの機能はすべてスマートフォンアプリ「Do.Fun」上で直感的に操作できるよう設計されていました。
バッテリー性能と飛行時間、充電に関する情報
DOBBYのバッテリーは容量970mAhの2セルLiPoバッテリーです。
公称の飛行時間は約9分ですが、実質的な飛行時間は撮影を行いながらだと約5〜7分程度となることが一般的でした。
充電は専用の充電ドックを使用し、USB Type-Cケーブル経由で行います。モバイルバッテリーからの充電にも対応しており、外出先での利便性は考慮されていました。
ただし、飛行時間の短さは小型ドローンの宿命であり、予備バッテリーを複数持ち歩く運用が基本とされていました。
DOBBYドローンは今も手に入る?現在の入手方法と購入時の注意点
専用アプリ「Do.Fun」が現在のスマホOSで動作するか、購入前に必ず確認してください。
発売から数年が経過し、メーカーによる生産も終了しているDOBBYですが、現在でも入手することは可能なのでしょうか。ここでは現在の市場状況と注意点を解説します。
DOBBYドローンの現在の市場状況(新品・中古)
現在、DOBBYドローンの新品が正規の販売ルートで流通することはほぼありません。家電量販店や主要なECサイトでの取り扱いは終了しています。
入手を希望する場合、基本的にはオークションサイトやフリマアプリ、中古カメラ店などを利用することになります。
市場には「未開封の新品」が出回ることも稀にありますが、多くは使用済みの中古品です。価格は発売当時(約5万円前後)に比べて大幅に下がっており、数千円から1万円程度で取引されるケースも見られます。
中古品購入時に必ず確認すべきポイントとリスク
中古のDOBBYを購入する際は、以下の点に注意が必要です。
- 機体の破損:プロペラやアームの可動部に亀裂や破損がないか。墜落歴がある機体は内部センサーに異常がある可能性があります。
- 付属品の有無:専用充電器、バッテリー、プロペラガードなどが揃っているか。特に充電器は専用品のため、欠品していると充電手段がなくなります。
- 技適マーク:日本国内で正規販売されたモデルであれば技適マークがありますが、海外版の並行輸入品にはマークがない場合があります。
技適マークのない無線機器を国内で使用することは電波法違反となる恐れがあるため、必ず確認しましょう。
バッテリー劣化と交換の可能性・代替案
最も大きなリスクは「バッテリーの劣化」です。
リチウムポリマーバッテリーは経年劣化するため、たとえ未使用品であっても、長期間放置されたバッテリーは充電できなくなっている(過放電)可能性があります。
また、純正バッテリーの新品供給はすでに終了しており、市場に残っている在庫も製造から年数が経過しています。
サードパーティ製の互換バッテリーが販売されている場合もありますが、品質や安全性は保証されていません。飛行時間が極端に短い、あるいは突然電源が落ちるといったリスクを考慮する必要があります。
専用アプリ「Do.Fun」の現在の対応状況と互換性
DOBBYを操縦するためには、専用アプリ「Do.Fun」が必要です。
しかし、アプリの最終更新から時間が経過しており、最新のiOSやAndroid OSでは正常に動作しない、あるいはアプリストアからダウンロードできない可能性があります。
購入前に、ご自身のスマートフォンでアプリがインストールおよび起動できるかを確認することが重要です。アプリが使えない場合、機体を制御する手段がなくなります。
ユーザー視点で見るDOBBYドローンのメリット・デメリット
ポケットに入る携帯性は、現在の最新ドローンと比較しても際立っています。
ここでは、実際にDOBBYを使用したユーザー視点に基づき、製品の評価を客観的に整理します。
ここが良かった!DOBBYドローンの高い評価点
DOBBYが評価された最大のポイントは、やはり「携帯性」です。
ポケットから取り出してすぐに飛ばせる手軽さは、当時の他のドローンにはない体験でした。また、専用コントローラーが不要でスマホだけで完結するスタイルは、荷物を減らしたい旅行者にとって大きなメリットでした。
画質に関しても、日中の明るい屋外であれば、SNSに投稿するには十分なクオリティの写真や動画が撮影できました。電子手ブレ補正も、風が穏やかな条件下ではそれなりに機能し、安定した映像を提供しました。
今振り返る「ここが惜しかった」デメリットと課題
一方で、いくつかの課題もありました。
- ジンバルがないことによる映像のブレ:機械式のジンバル(カメラ安定装置)を搭載していないため、機体の傾きがそのまま映像に反映されます。電子補正はあるものの、風が強い日や激しい動きをすると映像がカクついたり、コンニャク現象(ローリングシャッター歪み)が発生したりすることがありました。
- Wi-Fi接続の不安定さ:スマートフォンとの通信にWi-Fiを使用するため、電波干渉のある場所では映像伝送が遅延したり、接続が切れたりすることがありました。
- 飛行音の大きさ:小型のプロペラを高回転させるため、サイズに似合わず甲高い飛行音が鳴り、静かな場所での使用には配慮が必要でした。
現行の小型ドローンとDOBBYを比較するなら
現在では、DJI Miniシリーズなどを筆頭に、249g以下や100g以下で3軸ジンバルを搭載した高性能なドローンが登場しています。
これらと比較すると、DOBBYの飛行安定性や画質、飛行時間はどうしても見劣りします。
しかし、「完全にポケットに入る形状」という点においては、現在のドローンと比較してもDOBBYのコンパクトさは際立っています。
DOBBYドローンがドローン市場に残した影響とレガシー
「ドローンは大きくて持ち運びが大変」という常識を覆した功績は計り知れません。
最後に、DOBBYドローンがテクノロジー業界に与えた影響について考察します。
「小型・高機能」のトレンドを切り開いた先駆者
DOBBYは、トイ・ドローン(おもちゃ)と本格的な空撮ドローンの間を埋める「高性能な小型ドローン」という市場を開拓しました。
それまで「ドローンは大きくて持ち運びが大変」という常識を覆し、一般消費者が日常的に持ち歩くガジェットとしての可能性を示しました。
後続のセルフィードローンやコンシューマードローンへの影響
DOBBYの登場後、DJIからは「Spark」や「Mavic Mini」といった小型モデルが登場しました。
これらの製品開発において、DOBBYが示した「携帯性へのニーズ」や「スマホ連携の重要性」が少なからず影響を与えたと考えられます。
DOBBYは、ドローンが専門的な機材から、身近なカメラデバイスへと進化する過程における重要なマイルストーンでした。
まとめ:DOBBYドローンは歴史に残る名機だったのか?
DOBBYドローンは、完璧な製品ではなかったかもしれません。飛行時間や画質には限界がありました。
しかし、そのコンセプトの先進性と、多くのユーザーに「空撮の楽しさ」を手軽に体験させた功績は大きく、ドローンの歴史において記憶されるべき名機と言えるでしょう。
現在、実用目的で中古のDOBBYを購入することは、バッテリーやアプリの問題から推奨しにくい面があります。しかし、ドローン技術の進化を感じるためのコレクションや、テクノロジーの歴史的な資料としての価値は今も失われていません。
まとめ
本記事では、かつて一世を風靡したセルフィードローン「DOBBY」について解説しました。
- DOBBYの特徴:ポケットサイズの折りたたみ式、スマホ操作、4Kカメラ搭載(出力は1080p)。
- 当時の魅力:200g未満(当時)の規制対象外重量と高い携帯性でヒットした。
- 現在の注意点:航空法改正により現在は100g以上で登録義務あり。生産終了品のため、バッテリー劣化やアプリ互換性のリスクが高い。
- 市場への影響:小型高性能ドローンの先駆けとして、その後の市場トレンドを作った。
これからドローンを始める方は、DOBBYのコンセプトを受け継ぎつつ、より高性能に進化した現行の小型ドローン(100g以上の場合は登録が必要)を検討するのが現実的です。
しかし、DOBBYが切り拓いた「テクノロジーをポケットに入れて持ち運ぶ」という未来像は、今のガジェットシーンにも息づいています。


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