ドローン勝手に撮影された時の対処法と相談先

ドローン勝手に撮影された時の対処法と相談先

この記事の結論
・ドローンを発見したら、まずは日時・場所・機体の特徴などの状況証拠を冷静に記録する

・危険を感じたら警察へ相談し、ネット上に映像が公開されていないか確認して削除請求を行う

・物理的な目隠しで予防しつつ、解決が難しい場合は弁護士などの専門家と連携して法的措置を検討する

自宅の庭でくつろいでいる時や、マンションのベランダにいる時、ふと空を見上げるとドローンが飛んでいて「自分の方を向いている」「勝手に撮影されたかもしれない」と不安を感じたことはないでしょうか。

ドローンの普及に伴い、こうしたプライバシーに関するトラブルや不安の声は増加傾向にあります。

もし実際に無断で撮影されたと感じた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

感情的に行動してドローンを撃ち落そうとしたり、無理に捕まえようとしたりすることは、かえって法的なトラブルを招く恐れがあります。

本記事では、テック総合メディア「FlyMovie Tech」の編集方針に基づき、ドローンによる無断撮影被害に遭った際にまず取るべき緊急行動から、法的な根拠、具体的な解決策までを分かりやすく解説します。

自身のプライバシーを守り、冷静に対処するためのガイドとしてお役立てください。

目次

「ドローンに勝手に撮影されたら」まず取るべき緊急行動ステップ

焦って撃墜しようとせず、まずは冷静に証拠を残すことが解決への近道です。

ドローンによる無断撮影の疑いがある場合、焦らず冷静に行動することが何よりも重要です。

被害を証明し、その後の対処をスムーズに進めるために、まずは以下のステップで初動対応を行いましょう。

状況証拠を冷静に確保する(日時・場所・ドローンの特徴など)

無断撮影の被害を訴えるためには、客観的な証拠が必要です。

ドローンを発見した際は、自身の安全を確保した上で、可能な限り以下の情報を記録してください。

  • ドローンの機体情報:色、形、大きさ、ライトの有無など。もし可能であれば、スマートフォンなどでドローンの機体を撮影・録画します。
  • 発生日時と場所:正確な日付と時刻、飛行していた場所(自宅の庭、ベランダの目の前など)をメモします。
  • 飛行の様子:ホバリング(空中で静止)していたか、旋回していたか、カメラレンズがこちらを向いていたかなど、具体的な挙動を記録します。

機体に「登録記号(アルファベットと数字の組み合わせ)」が表示されている場合、それが所有者を特定する重要な手がかりとなります。

しかし、飛行中の機体から目視で確認するのは困難な場合が多いのが実情です。

まずは機体の外見的特徴を記録することに注力しましょう。

警察への通報・相談を検討する際のポイント

ドローンが執拗に自宅を覗き込んでいる、あるいは危険な低空飛行を繰り返しているなど、身の危険や明らかな悪意を感じる場合は、迷わず警察に通報・相談することを検討してください。

  • 緊急性が高い場合:直ちに110番通報を行い、「ドローンが自宅を覗いている」「危険な飛び方をしている」と伝えます。
  • 相談ベースの場合:緊急性はないが不安な場合は、警察相談専用電話「#9110」や最寄りの警察署へ相談します。

警察に相談する際は、前項で記録した証拠(写真、動画、メモ)を提示することで、状況を正確に伝えることができます。

インターネット上での公開状況の確認と記録

撮影された映像がインターネット上に公開されていないかを確認することも重要です。

YouTubeやX(旧Twitter)、InstagramなどのSNSや動画共有サイトで、以下のキーワードを組み合わせて検索してみましょう。

  • 撮影された場所の地名(市区町村名、公園名など)
  • 日時
  • 「ドローン」「空撮」などのキーワード

もし自身のプライバシーを侵害する映像が公開されているのを発見した場合は、そのページのURL、スクリーンショット、投稿者のアカウント情報などを直ちに保存してください。

これらは後の削除請求や法的措置において不可欠な証拠となります。

ドローンによるプライバシー侵害とは?法的根拠とリスク

撮影場所の秘匿性や人物の特定可能性が、違法性を判断する鍵となります。

「勝手に撮影された」という行為は、法的にどのような問題があるのでしょうか。

ここでは、総務省のガイドラインや民法に基づき、ドローン撮影におけるプライバシー侵害の法的根拠を解説します。

プライバシー侵害の定義とドローン撮影の法的問題

ドローンによる撮影が直ちに違法となるわけではありませんが、撮影の態様によっては「プライバシー侵害」や「肖像権侵害」に該当し、民法上の不法行為責任(民法709条)を問われる可能性があります。

総務省が公表している「ドローンによる撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」等によると、プライバシー侵害の有無は以下の要素などを総合的に考慮して判断されます。

  • 撮影の目的:正当な目的があるか、覗き見目的か
  • 撮影の方法:望遠レンズの使用や執拗な追尾などがないか
  • 撮影対象の性質:自宅内や脱衣所など、通常他人の目に触れない場所(私事性・秘匿性)か
  • 映り込みの程度:人物が特定できるか、メインで映っているか

単に風景の一部として小さく映り込んだ程度であれば受忍限度内とされることもありますが、特定の個人や私生活を意図的に撮影・公開した場合は、権利侵害とみなされるリスクが高まります。

引用元:総務省ガイドライン

ドローン飛行に関する基本的な法的規制(航空法・民法など)

プライバシーの問題とは別に、ドローンの飛行そのものが法令違反である可能性もあります。

  • 航空法:人口集中地区の上空、空港周辺、地上150m以上の空域などは、原則として国土交通大臣の許可が必要です。また、日没後の飛行や目視外飛行にも承認が必要です。さらに、100g以上の機体には機体登録が義務付けられており、無登録で飛行させた場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」などの罰則が科される可能性があります。
  • 民法:土地の所有権は「その土地の上下に及ぶ」(民法207条)とされていますが、上空何メートルまで権利が及ぶかの明確な基準はありません。ただし、他人の土地の上空を低空で飛行し、土地利用を妨害するような場合は、所有権侵害となる可能性があります。

引用元:BUSINESS LAWYERS

過去の事例から学ぶプライバシー侵害の危険性

過去には、高層マンションの部屋をドローンで撮影し、その映像をインターネット上に公開した行為が問題視された事例や、露天風呂を撮影しようとした事例などが報告されています。

裁判例においても、自宅の庭や特定の個人に焦点を当てた無断撮影・公開について、プライバシー侵害や肖像権侵害を認め、撮影者に慰謝料の支払いを命じたケースが存在します。

このように、ドローンによる撮影は「空からの覗き見」として法的責任を追及される現実的なリスクを含んでいます。

引用元:法律事務所事例

撮影者特定から法的措置まで!具体的な対処法

個人での特定は難しいため、警察や弁護士などの専門機関と連携しましょう。

実際に被害に遭い、法的措置や削除請求を行いたい場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

ここでは具体的な対処プロセスを解説します。

撮影者の特定は可能か?手がかりと限界

法的措置をとるためには、まず「誰が撮影したか」を特定する必要があります。

しかし、ドローンは遠隔操作されており、操縦者が離れた場所にいることが多いため、個人での特定は非常に困難です。

  • 機体登録制度:現在、100g以上のドローンには登録記号の表示とリモートID(機体情報を電波で発信する機器)の搭載が義務付けられています。
  • 警察への協力要請:一般人がリモートIDの情報を傍受・解読して個人情報を特定することはできませんが、警察が捜査の一環として行う場合は、機体情報から所有者を割り出せる可能性があります。

したがって、撮影者を特定したい場合は、自力で探すよりも警察へ相談し、被害届の提出などを検討することが現実的なルートとなります。

撮影された画像・映像の削除・公開停止を求める手順

自身のプライバシーを侵害する映像がインターネット上で公開されている場合、プロバイダ責任制限法に基づき、サイト管理者やプロバイダに対して「送信防止措置(削除)」を依頼することができます。

  1. 各サイトの通報フォームを利用:YouTubeやSNSには、プライバシー侵害を理由とする削除依頼フォームが用意されています。
  2. 送信防止措置依頼書の送付:サイト管理者が不明な場合やフォームでの対応が不十分な場合、書面にて削除を求めます。総務省のガイドラインでも、ドローン映像の拡散は被害が大きいため、実務的な削除対応が重要であると指摘されています。

引用元:総務省ガイドライン

損害賠償請求のプロセスと慰謝料の相場

撮影者が特定できた場合、民事訴訟や示談交渉を通じて、精神的苦痛に対する慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。

慰謝料の金額については、公式な一律の相場というものは明記されていません。

侵害の程度、公開された範囲、被害者が受けた精神的苦痛の大きさ、撮影の悪質性などの個別事情を総合的に考慮して決定されます。

過去の裁判例などを参考に算定されるため、弁護士等の専門家による判断が必要です。

専門家への相談先と費用の目安(警察・弁護士・プラットフォーム事業者)

個人での対応が難しい場合は、専門機関への相談を推奨します。

  • 警察:迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反、航空法違反の疑いがある場合。相談は無料です。
  • 弁護士:撮影者の特定、削除請求の代行、損害賠償請求を行う場合。法テラスなどを利用すれば、無料相談が可能な場合もあります。
  • 総務省「違法・有害情報相談センター」:ネット上の権利侵害情報の削除に関する相談を受け付けています。

ドローンによる無断撮影の予防策と今後の対策

カーテンやシェードなど、物理的に視線を遮ることが最も確実な予防策です。

一度被害に遭うと、「また撮られるのではないか」という不安が残ります。

ここでは、個人でできる予防策と、技術的な対策の可能性について触れます。

個人でできる物理的・視覚的な予防策

ドローンからの視線を遮る物理的な対策が、最も即効性のある予防策です。

  • カーテンやブラインドの活用:特に高層階や外からの視線が気になる窓には、遮像カーテンを使用します。
  • 目隠しフェンスや植栽:庭やベランダへの視線を遮るために、上方向からの視覚を遮るシェードやオーニング(日よけ)を設置することも有効です。

ドローン検知システムなど技術的対策の可能性

企業や重要施設向けには、ドローンの飛来を検知するシステム(ドローン検知器)が存在しますが、現時点では一般家庭向けに安価で導入できる製品は限られています。

また、ドローンの通信を妨害する装置(ジャミング装置)などは、電波法違反となる恐れがあるため、個人が独断で使用することはできません。

技術的な対策については、今後の法整備や家庭用セキュリティ製品の進化を待つ必要があります。

ドローン操縦者が守るべきルールとプライバシー配慮の重要性

本記事の読者の中には、ドローンに興味がある方もいるかもしれません。

ドローンを飛ばす側は、航空法などの法令遵守はもちろん、「人のプライバシーを侵害しない」という倫理観を持つことが不可欠です。

総務省ガイドラインでも、撮影の必要性や方法について慎重な判断が求められています。

「他人の家を覗かない」「人がいる場所の上空を飛ばない」といった基本的なマナーを守ることが、テクノロジーと社会が共存するための第一歩です。

まとめ

ドローンによる無断撮影被害に遭った場合、不安や怒りを感じるのは当然ですが、まずは冷静に状況証拠を確保することが解決への第一歩です。

  1. 証拠確保:日時、場所、機体の特徴を記録する。
  2. 警察相談:危険を感じたら迷わず通報・相談する。
  3. ネット確認:公開されている場合は削除請求を行う。

ドローンによる撮影は、状況によってプライバシー侵害や不法行為として法的責任を問える可能性があります。

一人で抱え込まず、警察や弁護士などの専門家に相談し、適切な対処を行いましょう。

FlyMovie Techは、テクノロジーが正しく使われ、誰もが安心して暮らせる社会を願っています。

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