ドローンによる空撮は、日中だけでなく夜景撮影など夜間においても大きな魅力があります。
しかし、ドローンの夜間飛行は航空法によって原則禁止されており、実施するには厳格なルールと安全対策が求められます。
特に重要となるのが、機体の位置や向きを視認するための「ライト(灯火)」の装備です。
本記事では、ドローンの夜間飛行を安全かつ合法的に行うために必要な知識を網羅的に解説します。
法的規制の基礎から、国土交通省への許可申請手順、そして2025年の法改正に対応した最新ルールまでを整理しました。
また、夜間飛行に不可欠なライトの選び方や、実践的な安全対策についても詳しく紹介します。
ドローンの夜間飛行は原則禁止!知っておくべき法的規制とリスク
ドローンを夜間に飛行させることは、航空法において「特定飛行」の一つとして位置づけられており、原則として禁止されています。
まずは、なぜ夜間飛行が規制されているのか、その定義とリスクについて正しく理解しましょう。
航空法における「夜間飛行」の定義と原則禁止の理由
航空法において「夜間」とは、日没から日の出までの間を指します。
この時間帯にドローンを飛行させることは、場所や高度に関わらず、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要です。
夜間飛行が厳しく規制されている主な理由は、安全確保の難しさにあります。
暗闇では機体の位置や向き、周囲の障害物(電線、樹木、建物など)を目視で確認することが極めて困難になります。
視認性の低下は操縦ミスを誘発しやすく、墜落や衝突といった事故のリスクが日中に比べて格段に高まるため、原則禁止という措置が取られています。
「夜間」の定義は周囲の明るさではなく、国立天文台が発表する時刻が基準となります。
夜間飛行が無許可で行われた場合の罰則
許可を得ずに夜間飛行を行った場合、あるいは承認された飛行条件に違反した場合は、航空法に基づき罰則が科される可能性があります。
具体的には、50万円以下の罰金が科される可能性があるほか、国土交通大臣の指示に従わなかった場合には、さらに重い罰則となるケースもあります。
「少しだけなら大丈夫だろう」という安易な判断は、重大な法的責任を問われることになります。
法令遵守(コンプライアンス)の意識を強く持ち、必ず所定の手続きを経てから飛行を行う必要があります。
日没から日出までの正確な時間を確認する方法
夜間飛行に該当するかどうかは、気象庁や国立天文台が発表する「日没」と「日の出」の時刻によって判断されます。
周囲の明るさや個人の感覚ではなく、客観的な時刻が基準となります。
具体的な確認方法として、実務上は国立天文台の暦計算室などのウェブサイトを参照し、飛行する地域の正確な日没・日の出時刻を事前に確認することが一般的です。
地域や季節によって時刻は分単位で異なるため、飛行計画を立てる際は余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
ドローン夜間飛行に必要な国土交通省への許可申請ガイド
夜間にドローンを飛ばすためには、国土交通省への許可・承認申請が必須です。
ここでは、申請の全体像と、2025年の制度改正を含めた具体的な要件について解説します。
夜間飛行の許可・承認が必要となるケースと申請方法
夜間飛行を行う場合、原則としてDIPS 2.0(ドローン情報基盤システム)を通じて、国土交通大臣の許可・承認を受ける必要があります。
これは「特定飛行」に該当するためです。
ただし、2025年3月24日施行の審査要領改正により、以下の条件を満たす場合は個別の許可申請が不要となるケースがあります。
- 国家資格(無人航空機操縦者技能証明)を保有していること
- 機体認証を受けたドローンを使用すること
- 係留飛行など、特定の安全措置が講じられている場合
これらの条件に当てはまらない一般的なケース(独自の機体や民間資格のみの場合など)では、従来通りDIPS 2.0での申請が必要です。
許可取得のために満たすべき追加基準
夜間飛行の許可を得るためには、機体や運用体制において特定の基準を満たす必要があります。
2025年3月31日以降、標準マニュアルの改正により、以下の要件が適用されています。
- 灯火の装備:機体の向きを視認できる灯火(ライト)が装備されており、その灯火が容易に認識できる範囲内で飛行させること。
- 目視外飛行の禁止:夜間飛行の許可のみでは、モニターを見ながらの目視外飛行は認められません(別途目視外飛行の承認が必要)。
- 飛行経路の事前確認:日中に、飛行させようとする経路およびその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を選定すること。
- 操縦者の要件:操縦者は夜間飛行の訓練を修了した者に限られます。
以前の基準にあった「飛行高度と同じ距離の半径の範囲内に第三者が存在しない状況」というルールは撤廃され、代わりに日中の事前確認が義務付けられました。
2025年の改正で「日中の経路確認」が必須要件になった点に注意してください。
飛行マニュアル作成のポイントと提出書類
申請時には「飛行マニュアル」の提出または遵守が求められます。
国土交通省が公開している「航空局標準マニュアル」を使用するのが一般的ですが、独自の運用ルールを設ける場合は独自マニュアルの作成が必要です。
夜間飛行に関しては、標準マニュアルにおいて「夜間の飛行体制」や「安全対策」が規定されています。
特に2025年3月31日の改正以降は、前述の「日中の経路確認」に関する記述が含まれているかを確認する必要があります。
【最重要】ドローン夜間飛行における「ライト」の選び方と搭載方法
夜間飛行の許可要件にもある通り、機体の向きや位置を把握するための「ライト(灯火)」は必須装備です。
ここでは、安全確保のために適切なライトの選び方を解説します。
夜間飛行に必須!ライトの役割と満たすべき要件
夜間飛行におけるライトの最大の役割は、操縦者が機体の位置と向き(機首方向)を目視で判断できるようにすることです。
真っ暗な空中で、ドローンがどちらを向いているかが分からなくなると、操作を誤り機体を見失う(ロストする)危険性が高まります。
法令上の要件としても、「機体の向きを視認できる灯火」の装備が義務付けられています。
単に光れば良いわけではなく、前後左右の識別が可能な配置や色分けが求められます。
視認性を高めるライトの種類と選び方のポイント
一般的に夜間飛行の安全性を高めるためには、以下のポイントを考慮してライトを選ぶことが推奨されます。
- 明るさ(輝度):遠方からでも視認できるよう、十分な光量を持つLEDライトを選びます。
- 色:航空機の航行灯に倣い、左翼に赤、右翼に緑、尾部に白といった色分けができるものが理想的です。
- 点滅パターン:常時点灯だけでなく、点滅(ストロボ)機能があると、背景の街明かりと区別しやすくなります。
- 電源:機体のバッテリーを消費しないよう、独立したバッテリーを内蔵した充電式タイプが運用しやすいとされています。
前後で異なる色を使用することで、暗闇でも機体の向きを瞬時に判別できます。
効果的なライトの取り付け位置と工夫
ライトを取り付ける際は、機体のバランス(重心)を崩さないことと、プロペラの回転やセンサーの動作を妨げないことが重要です。
- 機体の前後またはアーム:機首方向がわかるように、前方と後方で異なる色のライトを配置します。
- 下部:着陸地点を照らすためのダウンライトがあると、離着陸時の安全性が向上します。
- 照射角度:操縦者から見て光が見える角度に取り付けます。真上や真下だけでなく、水平方向からの視認性も確保します。
【FlyMovie Tech推奨】夜間飛行に適した具体的なライト製品例
選定にあたっては以下のカテゴリに属する製品を探すことが、安全な夜間飛行への近道となります。
- ドローン専用ストロボライト:軽量で強力な閃光を発し、数キロ先からでも視認可能な対衝突用ライト。
- アーム取り付け型LEDライト:特定のドローン機種のアーム形状に合わせて設計された拡張パーツ。
- 多色切り替え式ライト:1つのライトで赤・緑・白・黄など複数の色に切り替え可能な製品。
製品を選ぶ際は、ご自身のドローンの重量(積載能力)を超えないよう、数グラム単位での重量確認を必ず行ってください。
夜間飛行を安全に実施するための実践的ノウハウと安全対策
許可を取得し、ライトを装備しても、夜間飛行のリスクがゼロになるわけではありません。
事故を防ぐための実践的な運用ノウハウを紹介します。
補助者の役割と具体的な配置計画
夜間飛行では、操縦者一人ですべての安全を確認することは困難です。
可能な限り補助者(監視員)を配置することが推奨されます。
補助者の主な役割は、機体の監視と周囲の安全確認です。
操縦者がモニターや機体の制御に集中している間、補助者は肉眼で機体を追い続け、接近する障害物や第三者がいないかを確認します。
飛行前後の入念な安全点検と環境調査
夜間は見えない危険が潜んでいます。飛行前には以下の点検を日中以上に入念に行う必要があります。
- 日中のロケハン(事前確認):2025年のルール改正でも義務付けられた通り、明るいうちに飛行経路の障害物を確認します。
- 離着陸地点の確保:平坦で十分な広さがあり、照明等で足元が明るい場所を選定します。
- 機体ステータスの確認:GPSの受信状況やコンパスのキャリブレーション、バッテリー残量などを確実にチェックします。
夜間は見えにくい電線や枝を確認するため、日中のロケハン(事前確認)は必須です。
夜間飛行特有の操縦のコツと注意すべきポイント
夜間は距離感が掴みにくく、機体が実際よりも遠くに見えたり、近くに見えたりする錯覚(空間識失調)が起こりやすくなります。
ライトが見える範囲であっても、遠くに行き過ぎないよう目視範囲内での飛行を徹底してください。
また、目視だけでなく、送信機の画面に表示される高度や距離の数値をこまめに確認し、客観的な位置情報を把握することが重要です。
万が一の緊急事態発生時の対応プロトコル
機体を見失ったり、制御不能になったりした場合に備え、事前に対応手順を決めておくことが重要です。
機体を見失った場合は、慌てずにRTH(リターントゥホーム)などの自動帰還機能を活用しましょう。
ただし、帰還高度の設定が周囲の障害物より高いことを事前に確認しておく必要があります。
夜間飛行を検討するドローン選びのポイントと推奨機種
夜間飛行を前提とする場合、どのようなドローンを選ぶべきでしょうか。機体選定の基準について解説します。
夜間飛行に適したドローンの機能と特徴
夜間飛行を安全に行うためには、以下の機能を備えたドローンが有利です。
- 高感度カメラ:暗所でもノイズの少ない映像が撮れる、大型のイメージセンサーを搭載したモデル。
- 補助ライト(ダウンライト):着陸時に地面を照らすLEDライトを標準装備しているモデル。
- 全方向障害物検知センサー:夜間はセンサーの効きが悪くなる場合がありますが、赤外線センサーなど暗所でも機能する補助システムがあると安心です。
特に高感度カメラを搭載したモデルは、夜景撮影において圧倒的な画質と明るさを提供します。
初めての夜間飛行にもおすすめのドローン機種
一般的に市場で評価されているドローンの中で、夜間飛行に適した特徴を持つのは以下のようなクラスの機体です。
- 大型センサー搭載の空撮用ドローン:1インチ以上のセンサーを持つ機体。
- 産業用エントリーモデル:視認性の高いビーコン(閃光灯)をオプションで搭載できる機体。
機体を選ぶ際は、メーカーの仕様書を確認し、夜間運用に関する機能やオプション品の有無をチェックすることをおすすめします。
ドローンの夜間飛行とライト:安全・合法的なフライトのために
ドローンの夜間飛行について解説してきました。重要なポイントを振り返ります。
- 原則禁止:夜間飛行は航空法で規制されており、原則として国土交通省の許可・承認が必要です。
- 2025年新ルール:標準マニュアルの改正により、日中の事前経路確認が必須となりました。
- ライトの重要性:機体の向きを視認できる灯火の装備は法的義務であり、安全の要です。
- 安全対策:補助者の配置や事前のロケハンなど、日中以上の慎重な運用が求められます。
夜の空から見る景色は、日中とは全く異なる幻想的な世界です。
しかし、その美しさを楽しむためには、法律を守り、安全を最優先にする姿勢が不可欠です。
適切なライトを選び、しっかりとした飛行計画を立てることで、リスクを最小限に抑えることができます。
FlyMovie Techは、テクノロジーを正しく理解し、安全に活用するすべてのユーザーを応援しています。
本記事を参考に、安全で素晴らしい夜間フライトを実現してください。


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