ドローン操縦の醍醐味の一つに、まるで自分がコックピットに乗って空を飛んでいるかのような感覚を味わえる「FPV（First Person View：一人称視点）」があります。
その体験に欠かせないデバイスが「FPVゴーグル」です。
近年、技術の進化により高画質で臨場感あふれる映像を楽しめるようになりましたが、単眼式や二眼式といった種類の違いや、解像度、伝送方式など、初心者には選定が難しい要素も多く存在します。
本記事では、テック総合メディア「FlyMovie Tech」が、FPVゴーグルの基礎知識から失敗しない選び方、代表的なモデルの傾向、そして日本国内で使用する際に知っておくべき法律や規制について分かりやすく解説します。
FPVゴーグルとは？ドローン操縦の没入感を高めるデバイス
FPVゴーグルは、ドローンに搭載されたカメラの映像をリアルタイムで受信し、操縦者の目の前にあるディスプレイに映し出す装置です。
これにより、操縦者は地上にいながら上空からの景色をパイロット視点で楽しむことができます。
FPVの仕組みと役割
FPV（First Person View）は、ドローンから送信される映像信号をゴーグル内の受信機で受け取り、モニターに表示する仕組みです。
スマートフォンやタブレットの画面を見る通常の操縦とは異なり、視界全体が映像で覆われるため、非常に高い没入感（イマージョン）が得られます。
レース用ドローンでは障害物を避けるための正確な操作が必要とされ、空撮用ドローンでは構図を確認しながらの飛行が可能になるなど、用途に応じた重要な役割を果たしています。
FPVはパイロット視点で操縦できるため、精密な操作やダイナミックな構図確認に最適です。
単眼式と二眼式の違い
FPVゴーグルには大きく分けて「単眼式（ボックス型）」と「二眼式（メガネ型）」の2種類があります。
- 単眼式（モノキュラー/ボックス型）
1つの大きなモニターを拡大レンズを通して見るタイプです。構造が単純で安価なモデルが多く、メガネをかけたまま装着できる製品も多いため、初心者やメガネユーザーに適している場合があります。ただし、サイズが大きくかさばる傾向があります。 - 二眼式（バイノーキュラー/メガネ型）
左右の目それぞれに独立した小型モニターがあるタイプです。コンパクトで軽量なものが多く、画質やフィット感に優れています。瞳孔間距離（IPD）の調整機能がついていることが一般的で、より鮮明な映像体験が可能ですが、価格は高くなる傾向にあります。
失敗しないFPVゴーグルの選び方
FPVゴーグルを選ぶ際は、自身の用途や予算に合わせてスペックを確認することが重要です。ここでは主な比較ポイントを解説します。
解像度と視野角（FOV）
映像の美しさと没入感を決定づけるのが解像度と視野角（FOV）です。
解像度が高いほど細部まで鮮明に見え、特に空撮や風景を楽しむ用途では重要になります。2024年から2025年にかけてのトレンドとして、高解像度表示（OLEDなど）や4K録画に対応したモデルも登場しています。
視野角（FOV）は、数値が大きいほど画面が大きく見え、没入感が増します。一般的に30度〜50度程度のモデルが多く、レース用では視認性を重視し、空撮用では広がりを重視する傾向があります。
空撮を楽しむなら高解像度を、レース用なら視認性の良い適切なFOVを選びましょう。
装着感と調整機能
長時間のフライトでも快適に過ごせるよう、重量やフィット感は非常に重要です。
特に二眼式の場合、自分の目の幅に合わせる「IPD（瞳孔間距離）調整」機能の有無や調整範囲を確認する必要があります。
また、視力矯正が必要なユーザーは、視度調整機能（ジオプター）が内蔵されているか、あるいはメガネを併用できる形状かどうかも、メーカー公式情報で確認すべきポイントです。
伝送方式と遅延（レイテンシ）
映像伝送には「アナログ方式」と「デジタル方式」があります。
アナログは画質が劣りノイズが入りやすいものの、遅延（レイテンシ）が極めて少なく、瞬時の判断が求められるドローンレースで好まれます。
一方、デジタル方式（DJIなど）は高画質でクリアな映像が特徴ですが、アナログに比べるとわずかに遅延が発生する場合がありました。しかし近年の技術進化により、デジタル方式でも低遅延化が進んでいます。
代表的なブランドとモデルの傾向
市場には1万円台の入門機から数万円以上のプロ向けモデルまで、多種多様な製品が存在します。ここでは代表的なブランドとモデルの傾向を紹介します。
初心者・コスパ重視のモデル
初めてFPVに挑戦する方には、BETAFPVなどのブランドや、セット販売されている単眼式ゴーグルが選ばれる傾向にあります。
これらは比較的安価で導入しやすく、基本的なFPV体験を得るのに十分な性能を持っています。特に単眼式は構造上、画面が大きく見やすいため、初期の練習用として適しています。
初心者は画面が大きく安価な単眼式セットモデルから始めるのがおすすめです。
本格派・高画質モデル
より高品質な体験を求めるユーザーには、DJI、Fat Shark、Skyzoneといったブランドが人気です。
例えば「DJI Goggles 2」のようなモデルは、高精細なデジタル伝送と広視野角（約50°など）を備え、非常にクリアな視界を提供します。
「Fat Shark Scout」などはOLEDディスプレイを採用し、鮮やかな発色を実現しています。これらの上位モデルは、録画機能やヘッドトラッキング機能など、多機能であることも特徴です。
FPVゴーグル利用時の注意点とルール
日本国内でFPVゴーグルを使用してドローンを飛ばす場合、航空法や電波法などの法律を遵守する必要があります。
航空法と目視外飛行
FPVゴーグルを装着しての操縦は、操縦者が直接機体を目視できないため、航空法における「目視外飛行」に該当します。
目視外飛行を行う場合は、原則として国土交通省への許可・承認申請が必要です。
また、飛行時には補助者を配置して安全を確保するなどの体制が求められる場合があります。航空法の規制対象外となる軽量なトイドローンであっても、周囲の安全確認は必須です。
FPV飛行は「目視外飛行」となるため、必ず事前に承認申請と安全対策を行いましょう。
電波法と無線資格
FPVゴーグルへの映像伝送には、主に5.8GHz帯の電波が使用されます。
日本国内でこの周波数帯を使用する海外製FPV機器（VTXなど）を利用する場合、一般的には「アマチュア無線技士」の資格と無線局の開局申請、または業務利用であれば「陸上特殊無線技士」の資格と局免許が必要になるケースが大半です。
技適マーク（技術基準適合証明）のない海外製品をそのまま使用すると電波法違反になる恐れがあるため、購入前には日本国内での利用可否を必ず確認しましょう。
まとめ
FPVゴーグルは、ドローンの可能性を広げ、空を飛ぶような没入体験を提供してくれる素晴らしいデバイスです。選ぶ際は、以下のポイントを整理しましょう。
- 種類: 初心者やメガネユーザーは単眼式、画質と携帯性を求めるなら二眼式。
- スペック: 解像度、視野角（FOV）、遅延（レイテンシ）を確認。
- 用途: レースなら低遅延のアナログ、空撮なら高画質のデジタル。
- ルール: 目視外飛行の申請や、5.8GHz帯利用時の無線資格・技適の確認。
自身のスタイルに合った最適なゴーグルを選び、安全に配慮しながらテクノロジーの楽しさを体感してください。FlyMovie Techでは、今後もドローンに関する役立つ情報を発信していきます。
コメント