ドローン測量 資格は必要?種類と取得方法・費用を解説

ドローン測量 資格は必要?種類と取得方法・費用を解説

この記事の結論
・ドローン操縦自体に法的必須資格はないが、実務では国家資格や測量士資格が強く推奨される

・主要な資格は「無人航空機操縦者技能証明」「測量士・測量士補」「第三級陸上特殊無線技士」の3つ

・2025年12月以降、民間資格の効力が変わるため国家資格への移行と計画的な取得が重要となる

建設・土木業界における「i-Construction」の推進に伴い、ドローンを用いた測量業務の需要が急速に高まっています。

これからドローン測量を始めようとする方や、事業への導入を検討している方にとって、最も気になるのが「資格」の存在ではないでしょうか。

「ドローンを飛ばすのに免許は必要なのか」「測量士の資格は必須なのか」といった疑問は、法改正や技術の進歩により複雑化しています。

結論から言えば、ドローン測量の操縦自体に法的な必須資格はありませんが、実務においては国家資格や専門資格の取得が強く推奨されています。

本記事では、ドローン測量における資格の必要性から、主要な資格の種類、取得のメリット、そして安全管理に至るまでを網羅的に解説します。

テック初心者の方にも分かりやすく整理していますので、プロフェッショナルとしてのキャリア形成にお役立てください。

目次

ドローン測量に「資格は必須ではない」が取得が強く推奨される理由

ドローン測量の世界では、「操縦そのもの」に対する法的な資格要件と、「測量業務」を行うための要件が異なります。

まずは現状のルールと、なぜ資格取得が推奨されるのか、その背景を解説します。

ドローン測量の基本|i-Constructionとの関連性

ドローン測量(UAV測量)は、上空から撮影した写真データ等を用いて地形の3次元データを作成する技術です。

従来の手法に比べて短時間で広範囲を計測できるため、建設現場の生産性向上を目指す国土交通省の取り組み「i-Construction」において重要な役割を担っています。

この技術により、人手不足の解消や作業の効率化が期待されていますが、正確なデータを取得するためには、単にドローンを飛ばすだけでなく、測量の知識と安全な運航技術の両方が求められます。

資格がなくても操縦は可能?ただし実務には知識・技術が不可欠

現行の法制度において、ドローン(無人航空機)を操縦すること自体には、自動車の運転免許のような法的に必須となる免許制度は存在しません。

したがって、私有地や許可された空域であれば、資格を持たない人がドローンを飛ばして撮影を行うこと自体は可能です。

しかし、測量現場は複雑な地形や障害物が多い環境であることが一般的です。

GPSが入りにくい場所や強風下での飛行など、高度な操縦技術が求められる場面も多々あります。

資格が必須ではないとはいえ、無知識・無資格での業務実施は事故のリスクを高めるため、実務レベルでは専門的な知識と技術が不可欠とされています。

資格取得が「推奨される」具体的な理由(安全・信頼・業務拡大)

資格取得が強く推奨される最大の理由は「安全性」と「信頼性」の確保です。

特に、2022年12月から開始された国家資格制度(無人航空機操縦者技能証明)は、操縦者のスキルを客観的に証明するものです。

また、国土地理院が定める「公共測量におけるUAVの使用に関する安全基準(案)」においても、ドローン操縦に関する国家資格の取得が推奨されています。

公的な業務を受注する場合や、クライアントに対して安全管理体制を証明するためには、資格の保有が事実上の標準となりつつあります。

資格の取得は、クライアントに対する安全性と信頼性の強力な証明となります。

ドローン測量に役立つ主要な資格3選【国家・測量士・無線技士】

ドローン測量の業務を遂行する上で、特に重要となる資格は大きく分けて3つあります。

「操縦技術」「測量知識」「通信技術」のそれぞれの観点から解説します。

最重要!国家資格「無人航空機操縦者技能証明」の概要

2022年12月より開始されたドローンの国家資格制度です。「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」の2種類があります。

特に重要なのが以下の点です。

  • レベル4飛行の実現: 一等資格を取得し、機体認証などの条件を満たすことで、有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(レベル4)が可能になります。
  • 飛行許可申請の簡略化: 資格を保有することで、特定の飛行形態における許可・承認申請の一部が免除されるメリットがあります。

レベル3(無人地帯での目視外飛行)以上の高度な飛行を行う場合、国家資格の保有は事実上の必須条件となっています。

測量業務の専門家「測量士」「測量士補」

ドローンの操縦とは別に、「測量業務」そのものを行うために必要な国家資格です。

測量法に基づき、国や地方公共団体が発注する公共測量や、土地・建物の境界確定、面積計算などを行う場合は、測量士または測量士補の資格が必要です。

ドローンはあくまで「計測機器」の一つであるため、取得したデータを用いて正式な測量成果物を作成するには、測量士としての高度な知識と経験が求められます。

ドローン飛行に必須の場合がある「第三級陸上特殊無線技士」

ドローンの操縦に使用する電波(周波数)によっては、無線従事者の資格が必要になる場合があります。

一般的な空撮用ドローンで使われる2.4GHz帯であれば資格は不要ですが、産業用ドローンで長距離伝送や高画質映像の転送に用いられる「5.7GHz帯」を使用する場合は、「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格が必須となります。

業務で使用する機体の仕様を確認し、5.7GHz帯に対応している場合は必ず取得しなければなりません。

使用するドローンが5.7GHz帯に対応している場合、無線資格の取得が必須です。

各資格の取得方法・費用・期間を徹底比較【独学・スクール】

ここでは各資格の取得ルートについて解説します。

なお、具体的な費用や期間については、受講する機関や学習方法によって大きく異なるため、必ず各実施機関の公式情報を確認してください。

国家資格(一等・二等)の取得方法と目安費用・期間

国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」を取得するには、主に以下のステップがあります。

  1. 登録講習機関(ドローンスクール)の受講: 学科講習と実地講習を受け、修了審査に合格する。
  2. 指定試験機関での試験: 学科試験、実地試験(スクール修了者は免除)、身体検査を受ける。

費用と期間について:
具体的な金額や期間は、受講する登録講習機関のコース設定(初学者向けか経験者向けか等)により異なります。

公式情報として一律の金額は明記されていませんが、一般的にスクール受講料や試験手数料が必要です。

測量士・測量士補の取得方法と目安費用・期間

測量士・測量士補になるには、主に以下の方法があります。

  • 国家試験を受験する: 国土地理院が実施する試験に合格する。
  • 養成施設等を卒業する: 文部科学大臣の認定した大学や専門学校で測量に関する科目を修め、所定の実務経験(測量士の場合)を経る。

費用と期間について:
国家試験の受験手数料や、養成施設の学費がかかります。具体的な金額や試験日程については、国土地理院の公式サイトにて最新情報をご確認ください。

第三級陸上特殊無線技士の取得方法と目安費用・期間

第三級陸上特殊無線技士を取得するには、以下の方法が一般的です。

  • 国家試験を受験する: 日本無線協会が実施する試験に合格する。
  • 養成課程を受講する: 認定された団体が行う講習(養成課程)を受講し、修了試験に合格する。

費用と期間について:
受験料や受講料が必要です。養成課程であれば短期間(1日程度など)で取得できる場合もあります。

ドローン測量分野で役立つ民間資格の具体例と業界での評価

これまで多くの民間団体が独自のドローン資格(技能認証)を発行してきましたが、制度の変更により注意が必要です。

2025年12月以降の扱い:
国土交通省のHPに掲載されていた民間技能認証は、2025年12月以降、飛行許可承認申請時の技能証明としての効力を失うことが決定しています。

そのため、今後は国家資格への移行が推奨されています。

ただし、民間スクールでの講習は、測量特化の実務スキルを学ぶ場として依然として有用です。資格そのものの効力よりも、そこで得られる「実務的な測量ノウハウ」に価値があると考えられます。

最新の費用や試験日程は、必ず各実施機関の公式サイトで確認してください。

資格取得がもたらすメリットと、取得しない場合のリスク

資格を取得することは、単なる法令遵守以上のメリットをビジネスにもたらします。

一方で、資格を持たずに業務を行うことには潜在的なリスクが伴います。

資格保有で広がる業務範囲と顧客からの信頼獲得

国家資格(特に一等)を保有することで、従来は飛行が困難だった「第三者上空(有人地帯)」での飛行が可能になるなど、業務の幅が大きく広がります。

また、飛行許可申請の手続きが一部不要になることで、急な測量依頼にも迅速に対応できる体制が整います。

さらに、発注者に対して「国が認めた技能レベル」を提示できるため、技術力への信頼性が高まり、受注競争において有利に働く可能性があります。

測量チームにおける役割分担とキャリアパス

ドローン測量の現場では、ドローンを操縦する「パイロット」と、測量計画やデータ解析を行う「測量技術者」が連携することが一般的です。

  • パイロット: 無人航空機操縦者技能証明、陸上特殊無線技士
  • 測量技術者: 測量士、測量士補

それぞれの専門資格を持つことで役割分担が明確になり、チームとしての作業品質が向上します。

両方の知識を併せ持つ人材は希少価値が高く、キャリアアップにも繋がります。

資格なしでドローン測量を行う具体的なリスク(法的責任・トラブル・受注機会損失)

資格なしで業務を行う場合、以下のようなリスクが考えられます。

  • 法令違反の可能性: 5.7GHz帯を使用する機体を無線資格なしで運用した場合、電波法違反となります。また、レベル4飛行などの特定条件下で無資格飛行を行えば航空法違反となります。
  • 受注機会の損失: 公共測量など、有資格者の配置が要件または推奨される案件に参加できなくなる可能性があります。
  • 事故時の責任: 万が一の事故発生時、客観的な技能証明がないことで、安全管理義務違反を問われるリスクが高まる可能性があります。

資格保有は業務範囲を広げ、受注競争力を高めるための重要な要素です。

ドローン測量を安全に進めるための法規制と安全管理体制

ドローン測量は、航空法や電波法など複数の法律が絡む複雑な業務です。

資格取得と合わせて、関連法規の理解と安全管理体制の構築が必須です。

航空法・電波法など、遵守すべき主な法律

ドローン測量を行う上で遵守すべき主な法律は以下の通りです。

  • 航空法: 飛行禁止空域(空港周辺、人口集中地区など)や飛行の方法(目視外飛行、夜間飛行など)に関するルールを定めています。
  • 電波法: ドローンの操縦や画像伝送に使用する無線周波数に関するルールです。産業用ドローンでは特に注意が必要です。
  • 小型無人機等飛行禁止法: 重要施設(国会議事堂、原子力事業所など)周辺での飛行を禁止しています。

ドローン測量における具体的な安全管理体制の構築

安全な測量を行うためには、組織的な管理体制が求められます。

具体的には、飛行マニュアルの作成、機体の日常点検・定期点検の実施、操縦者の健康管理、緊急時の連絡体制の整備などが挙げられます。

国家資格制度では、こうした安全管理体制の構築も審査の対象となる場合があります。

国土地理院の公共測量作業規程と資格の関連性

国土地理院が定める「公共測量作業規程」や関連する安全基準では、ドローンを用いた測量における精度管理や安全対策が詳細に規定されています。

前述の通り、これらの基準において国家資格の取得が推奨されており、公共事業におけるドローン活用の標準的な指針となっています。

正確な測量成果を出すためには、これらの規程に準拠した作業手順を理解しておく必要があります。

公共測量を行う際は、作業規程に基づいた安全管理と手順の遵守が必須です。

まとめ

ドローン測量の分野では、操縦そのものに法的必須資格はないものの、実務においては「無人航空機操縦者技能証明(国家資格)」や「測量士」、「第三級陸上特殊無線技士」といった資格が極めて重要です。

本記事のポイント:

  • 国家資格の重要性: レベル4飛行の実現や申請免除、社会的信頼の獲得に直結します。
  • 測量士の必要性: 正確な測量業務を行うための専門知識として必須です。
  • 無線資格の確認: 使用するドローンの周波数帯(5.7GHzなど)に応じて取得が必要です。
  • 民間資格の期限: 2025年12月以降の制度変更を見据え、国家資格への移行を検討しましょう。

ドローン測量は技術革新が速い分野です。

資格取得をゴールとせず、常に最新の法規制や技術情報にアンテナを張り、継続的にスキルアップしていくことが、プロフェッショナルとして活躍するための鍵となります。

まずはご自身の業務に必要な資格を見極め、計画的な取得を目指してみてはいかがでしょうか。

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