ドローンを安全に運用するためには、操縦技術だけでなく機体のメンテナンスが欠かせません。
特に、航空法に基づく特定飛行を行う場合、飛行日誌の作成と携行が義務付けられており、その中には「点検整備記録」が含まれます。
しかし、初心者の方にとっては「具体的に何を書けばいいのか」「どの程度の頻度で記録すべきか」など、分かりにくい点も多いのではないでしょうか。
本記事では、ドローンユーザーが迷いやすい点検整備記録の具体的な記入例をパターン別に提示し、書き方や各項目の意味を分かりやすく解説します。
また、記録に必要な点検項目や管理方法についても整理しました。正しい記録方法を身につけ、安心してドローンを飛ばせる環境を整えましょう。
ドローン点検整備記録とは?義務化の背景と重要性
ドローンを運用する際、機体の状態を把握し記録に残すことは、安全管理の基本です。
ここでは、点検整備記録がどのような役割を持ち、なぜ必要なのかを解説します。
飛行日誌における点検整備記録の位置づけ
航空法において、特定飛行(人口集中地区の上空や目視外飛行など、国の許可・承認が必要な飛行)を行う場合、飛行日誌の作成・携行が義務付けられています。
この飛行日誌は、主に以下の3つの記録で構成されています。
- 飛行記録:いつ、誰が、どこで、どのような飛行を行ったかの記録
- 日常点検記録:飛行前および飛行後に実施する点検の記録
- 点検整備記録:定期的なメンテナンスや修理、部品交換を行った際の記録
点検整備記録は、毎回の飛行前後に行う「日常点検」とは異なり、20時間ごとの定期点検や、故障時の修理、部品交換など、より詳細な整備履歴を管理するためのものです。
国土交通省による記録作成義務化の背景と罰則
ドローンの利用拡大に伴い、機体の整備不良に起因する事故を防ぐため、国土交通省は飛行日誌の作成を義務化しました。
特定飛行を行う際に飛行日誌を備えていない、または記載内容に不備や虚偽がある場合、航空法違反として罰則の対象となる可能性があります。
具体的な罰則内容については公式情報に詳細な金額等の明記はありませんが、法令を遵守し、適切に記録を作成・管理することが求められます。
特定飛行を行う際は、必ず飛行日誌を携行し、虚偽のない正確な記録を残すことが法的義務です。
点検整備記録がもたらす安全運航とリスク回避のメリット
点検整備記録を正しくつけることは、単なる義務の履行以上のメリットがあります。
- 機体状態の可視化:過去の修理歴や部品交換時期を把握することで、次のメンテナンス時期を予測しやすくなります。
- 事故の未然防止:定期的な点検を通じて不具合の予兆を早期に発見できます。
- 資産価値の維持:適切に管理された機体は、長期的に安定した性能を発揮しやすくなります。
【記入例付き】ドローン点検整備記録の各項目と具体的な書き方
ここでは、国土交通省が公開している様式に基づき、具体的な記入方法を解説します。
公式様式で見る点検整備記録の記入項目
国土交通省の「飛行日誌の取扱要領」で定められている点検整備記録(様式3)には、以下の項目を記載する必要があります。
- 実施の年月日および場所:整備を行った日付と場所
- 実施者の氏名:実際に整備作業を行った人の氏名
- 点検、修理、改造および整備の内容:具体的に何をしたか(部品交換、定期点検など)
- 実施の理由:なぜその整備を行ったか(飛行時間到達、破損のためなど)
- 最近の機体認証後の総飛行時間:整備時点での機体の累積飛行時間
シナリオ別!具体的な記入例とポイント
状況に応じた具体的な記入例を紹介します。
日常的なメンテナンス・バッテリー交換時の記入例
日常点検で消耗品の劣化が見つかり、交換した場合の例です。
- 実施の年月日:202X年X月X日
- 場所:東京都〇〇区 自宅
- 実施者:山田 太郎
- 内容:プロペラ(右前方・左後方)の交換
- 理由:日常点検において亀裂を発見したため
- 総飛行時間:15時間30分
飛行中トラブル発生後の点検・修理時の記入例
飛行中に異常を感じ、メーカー修理や部品交換を行った場合の例です。
- 実施の年月日:202X年X月X日
- 場所:〇〇県〇〇市 ドローン修理センター
- 実施者:鈴木 次郎(修理担当者)
- 内容:モーター(左前方)の交換およびアーム部の補強
- 理由:飛行中に異音が発生し、着陸時に接触事故を起こしたため
- 総飛行時間:42時間10分
定期点検(20時間点検など)実施時の記入例
メーカー推奨の飛行時間に達した際に行う定期点検の例です。
- 実施の年月日:202X年X月X日
- 場所:神奈川県〇〇市 整備工場
- 実施者:佐藤 花子
- 内容:20時間定期点検(機体清掃、各部ネジ増し締め、ファームウェア確認)
- 理由:メーカー指定の点検推奨時間(20時間)に到達したため
- 総飛行時間:20時間05分
記入時の注意点とよくある疑問
点検整備記録を記入する際は、以下のルールを守る必要があります。
- 区切りのルール:前回の記録と区別しやすくするため、上下各1行を空けて記載し、空けた行には「〆」を記載します。
- 機体ごとの作成:複数のドローンを所有している場合、機体ごとに個別の点検整備記録を作成します。
- 不具合の転記:日常点検で発見した不具合に対する処置(修理など)を行った場合は、必ず点検整備記録にもその内容を記述します。
記録の区切りには必ず空行を設け、「〆」マークを入れて前後の記録と混同しないようにしましょう。
ドローン点検整備記録に必要な「具体的な点検・整備項目」
点検整備記録には「何を確認したか」を正確に残す必要があります。ここでは主な点検項目を整理します。
定期点検(20時間点検など)で確認すべきポイントとチェックリスト
メーカーが点検推奨時間を定めている場合はそれに従いますが、定めがない場合でも、国土交通省の指針では「20時間の飛行ごと」に点検整備を行うことが推奨されています。
主な確認ポイントは以下の通りです。
- 機体全体の清掃と異物混入の確認
- ネジやボルトの緩み確認と増し締め
- 配線の摩耗やコネクタの接続状態
- 通信系統の動作確認
メーカーの指定がない場合でも、20時間の飛行ごとに定期点検を実施し記録に残すことが推奨されます。
部位別(モーター、プロペラ、バッテリー、機体フレーム等)のチェック項目とメンテナンス
具体的なチェック項目はメーカーのマニュアルに準拠する必要がありますが、一般的に以下の部位は重点的な確認が必要です。
なお、公式情報として統一された詳細なチェックリストは存在しないため、機体ごとの仕様を確認してください。
- プロペラ:欠け、ひび割れ、変形がないか。取り付け部分のガタつきがないか。
- モーター:手で回した際に異音や引っかかりがないか。砂や埃が混入していないか。
- バッテリー:膨らみ(妊娠現象)がないか。端子の腐食や汚れがないか。
- 機体フレーム:アームに亀裂が入っていないか。着陸脚(ランディングギア)が破損していないか。
ファームウェア更新やソフトウェア関連の記録方法
機体のファームウェアや送信機のソフトウェア更新も、広義の「整備」に含まれます。
公式の記載要領に明記はありませんが、不具合解消や機能向上のために更新を行った際は、以下の要領で記録しておくとトラブルシューティングに役立ちます。
- 内容:機体ファームウェアをv01.00.05.00へ更新
- 理由:メーカーによる重要アップデート通知のため
ドローン点検整備記録を効率的に管理する方法
記録を継続するためには、自分に合った管理方法を選ぶことが大切です。
手書き・Excel・専用アプリ:記録方法別のメリット・デメリット比較
- 手書き(紙)
メリット:現場ですぐに記入できる。PCや電源が不要。
デメリット:紛失・汚損のリスクがある。検索や集計が困難。 - Excel・Word(デジタルファイル)
メリット:修正や複製が容易。PCで管理しやすい。国交省の様式をそのまま使える。
デメリット:現場での入力にはPCやタブレットが必要。 - 専用アプリ
メリット:スマホで完結し、飛行ログと連動できる場合がある。
デメリット:アプリによってはコストがかかる場合がある。
【ダウンロード可】Excelテンプレートの活用例と管理のコツ
国土交通省のWebサイトでは、飛行日誌(様式1〜3)のExcel版やWord版が公開されています。
これらをダウンロードし、クラウドストレージ(GoogleドライブやOneDriveなど)に保存しておけば、スマホやタブレットからいつでもアクセス・編集が可能になり、効率的に管理できます。
公式テンプレートをクラウドに保存し、スマホからいつでも編集できるようにしておくと管理がスムーズです。
データ保存とバックアップの重要性
デジタルで管理する場合、データの消失リスクに備える必要があります。
PC内に保存するだけでなく、クラウドへのバックアップや、定期的なプリントアウト(紙での保管)を組み合わせることで、機体認証の更新時や立ち入り検査時にもスムーズに対応できます。
記録を怠った際のリスクと安全運航への影響
点検整備記録の作成を怠ると、法的なペナルティだけでなく、実質的な不利益を被る可能性があります。
法律違反による罰則と行政指導の内容
特定飛行を行う際に飛行日誌(点検整備記録含む)を携行していない、または記載内容に虚偽がある場合、航空法違反となります。
具体的な罰則規定の適用や行政指導の対象となる可能性があるため、ルールを遵守することが不可欠です。
事故発生時の責任問題と保険適用への影響
万が一ドローンで事故を起こした場合、機体の整備状況が問われます。
点検整備記録が適切に残されていないと、「整備不良」とみなされ、操縦者の過失が重く判断される可能性があります。
また、保険会社によっては、法令違反(記録義務違反)がある場合、保険金の支払いが制限されるケースも考えられます。
記録不備は「整備不良」とみなされ、事故時の責任加重や保険金不払いのリスクにつながります。
機体認証・登録更新時のトラブル事例
ドローンの機体認証制度において、機体の維持管理状況を確認するために点検整備記録の提示が求められる場合があります。
記録が存在しない、あるいは不備がある場合、認証の更新がスムーズに進まないリスクがあります。
まとめ
本記事の要点と振り返り
- 義務化:特定飛行を行う場合、点検整備記録を含む飛行日誌の作成・携行は必須です。
- 記録内容:実施年月日、場所、実施者、内容、理由、総飛行時間を正確に記入します。
- 様式:国交省の様式に従い、前後の記録と区別するために「〆」を活用します。
- 実施時期:メーカー推奨時期または20時間ごとの定期点検に加え、修理や部品交換時にも記録します。
継続的な記録でドローンの寿命を延ばし、安全を確保しよう
点検整備記録は、単に法律を守るための書類ではありません。愛機のコンディションを把握し、故障を未然に防ぐための「健康診断カルテ」のようなものです。
適切な記録とメンテナンスを継続することで、ドローンの寿命を延ばし、誰もが安心してテクノロジーを活用できる安全なフライトを実現しましょう。


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