ドローンを業務や趣味で本格的に運用する際、避けて通れないのが航空法に基づくルールです。
特に、特定の条件下で飛行を行う「特定飛行」においては、許可承認の手続きが複雑になりがちです。
そこで注目されているのが、ドローンの「型式認証」制度です。
2024年、DJIの人気機種がついに日本の型式認証を取得し、大きな話題となりました。
しかし、「型式認証を取得したドローンは何が違うのか?」「今持っている機体はどうなるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DJIドローンの型式認証について、制度の基礎から対応機種、具体的な申請手順までを分かりやすく解説します。
これからドローンを導入する方や、よりスムーズな運用を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
【初心者必見】ドローンの型式認証とは?その目的とメリットを解説
ドローンの利用が広がる中、安全性と信頼性を確保するために設けられた重要な仕組みが「型式認証制度」です。
まずは、この制度の基本と、ユーザーにとってどのようなメリットがあるのかを整理します。
ドローン型式認証制度の概要と背景
型式認証制度とは、無人航空機(ドローン)の機体設計や製造過程が、安全性や均一性の基準に適合していることを国が検査し、認証する制度です。
自動車でいう「車検」や「型式指定」に近いイメージを持つと分かりやすいでしょう。
この制度は、ドローンの飛行リスクに応じた安全確保を目的としています。
認証には「第一種型式認証」と「第二種型式認証」の2種類があり、飛行させる空域や方法(カテゴリー)によって求められる認証が異なります。
- 第一種型式認証:第三者上空での飛行(レベル4飛行)など、より高リスクな飛行を行う機体が対象。
- 第二種型式認証:立入管理措置を講じた上での特定飛行(レベル3飛行など)を行う機体が対象。
DJIのドローンが取得したのは、このうちの「第二種型式認証」となります。
型式認証がもたらす最大のメリット:特定飛行の許可承認簡略化
一般ユーザーや業務ユーザーにとって、型式認証機を利用する最大のメリットは、「特定飛行」を行う際の手続きが大幅に簡略化されることです。
通常、人口集中地区(DID)の上空や夜間飛行、目視外飛行などの「特定飛行」を行う場合、国土交通省への許可・承認申請が必要です。
この際、機体の安全性や操縦者の技能を証明する詳細な資料提出が求められます。
しかし、型式認証を受けた機体を使用し、かつ「操縦者技能証明(国家資格)」を持つ操縦者が飛行させる場合、以下のメリットがあります。
- 機体認証検査の簡略化:個別の機体ごとに受ける「機体認証」において、設計・製造過程の検査が省略され、実機の現状検査のみとなります。
- 許可・承認の一部免除:特定の条件下(カテゴリーII飛行)において、飛行ごとの許可・承認申請が不要になる場合があります。
型式認証機と国家資格を組み合わせることで、申請の手間を大幅に削減できます。
「型式認証」と「機体認証」「操縦者技能証明」の違いと関係性
これらの用語は混同しやすいため、関係性を整理しておきましょう。
- 型式認証:「このモデル(型式)の設計と製造品質は安全基準を満たしている」という、メーカー側の機体モデルに対する認証。
- 機体認証:「手元にあるこの1台の機体は安全に飛行できる状態である」という、個別の機体に対する検査・認証。型式認証機であっても、個別にこの認証を受ける必要があります。
- 操縦者技能証明:いわゆる「ドローンの国家資格」。操縦者のスキルを証明するもの。
型式認証機を購入しただけではメリットを享受できません。
「型式認証機」を購入し、「機体認証」を取得し、さらに操縦者が「技能証明」を持っていることで、初めて手続きの簡略化という恩恵を受けられます。
機体認証と技能証明が揃って初めて、型式認証のメリットが発揮されます。
DJIの型式認証対応ドローン全機種一覧と特徴
世界的なドローンメーカーであるDJIも、日本の型式認証制度に対応した製品を展開し始めています。
ここでは、現在確認されている対応機種とその特徴について解説します。
現行のDJI型式認証取得ドローン機種リスト(Mini 4 Proなど)
調査データによると、DJI製ドローンとして初めて第二種型式認証を取得したのは以下の機種です。
- DJI Mini 4 Pro
ここで注意が必要なのは、「既存のDJI Mini 4 Pro」が自動的に型式認証機になるわけではないという点です。
型式認証に対応したモデルは「型式認証モデル」として別途販売されており、新たに購入する必要があります。
すでに所有している通常のMini 4 Proや、中古市場に出回っている非対応機体は、型式認証の対象外となります。
既存の機体は対象外のため、必ず「型式認証モデル」を購入してください。
各機種の対応飛行種類と主な用途・機能
DJI Mini 4 Pro(型式認証モデル)は「第二種型式認証」を取得しています。
これにより、立入管理措置を講じた上での特定飛行(カテゴリーII)において、安全性を担保された機体として運用可能です。
主な用途:
- 空撮(風景、イベントなど)
- 簡易的な点検業務
- 測量補助
Mini 4 Proは249g未満(バッテリー構成による)の軽量・コンパクトな機体でありながら、全方向障害物検知などの高度な安全機能を搭載しています。
型式認証モデルであっても、基本的な飛行性能や機能はベースモデルを踏襲していると考えられますが、法的な扱いが異なる点が最大の特徴です。
なぜDJIドローンが選ばれるのか?(カメラ・ジンバルの優位性にも言及)
型式認証の有無に関わらず、DJIドローンが多くのユーザーに選ばれる理由は、その圧倒的なカメラ性能とジンバル(スタビライザー)技術にあります。
- 高性能ジンバル:DJIはもともと制御技術に強みを持ち、小型機でも非常に安定した映像を撮影できます。風のある屋外でも、ジンバルが微細な揺れを補正し、映画のような滑らかな映像を実現します。
- カメラ性能:Mini 4 Proなどの最新機種では、縦向き撮影(True Vertical Shooting)に対応しており、SNS向けのコンテンツ制作に最適化されています。
型式認証モデルを選ぶことで、これらの優れた撮影機能を、よりスムーズな法的手続きのもとで業務利用できる点が、プロフェッショナルにとって大きな魅力となります。
DJI型式認証ドローン導入・運用までの具体的な手続きと費用
型式認証モデルのドローンを購入した後、実際に飛行させるまでにはいくつかの手続きが必要です。
ここでは、その流れを解説します。
型式認証ドローン購入後の「機体認証」申請手順と必要書類
型式認証モデルを購入しただけでは、まだ「型式認証機」としての運用はできません。
以下の手順で「機体認証」を受ける必要があります。
- 機体の購入:DJI正規代理店などで「型式認証モデル」を購入します。
- 機体登録とリモートID書き込み:国土交通省のDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で機体登録を行い、発行された登録記号を機体に反映させます。
- 機体認証の申請:DIPS2.0を通じて機体認証の申請を行います。
- 検査機関への申し込み:日本海事協会などの登録検査機関へ検査を申し込み、手数料を納付します。
- 検査と交付:書類検査および実機検査(現状検査)に合格すると、国土交通省から機体認証書が発行されます。
申請時には、製造者名「DJI JAPAN株式会社」、型式名「DJI Mini 4 Pro【DJI式DJI Mini 4 Pro型】」などを選択します。
機体認証の申請は、機体登録から1ヶ月以内に行う必要があります。
機体認証にかかる費用と期間の目安
機体認証にかかる具体的な費用や期間については、検査を行う機関(日本海事協会など)の規定によります。
- 費用:申請手数料や検査手数料が発生します。型式認証機の場合、設計・製造過程の検査が省略されるため、非認証機を一から検査する場合に比べて安価になる傾向があります。
- 期間:申請の混雑状況や書類の不備有無によって変動します。
正確な費用と期間については、申請前に必ず検査機関の公式サイト等で最新情報を確認してください。
運用開始前の最終チェックリスト
手続きが完了し、いざ運用を開始する前に、以下の点を確認しましょう。
- 機体認証書が発行されているか
- 機体に登録記号が表示されているか
- リモートIDが正常に機能しているか
- 操縦者が有効な技能証明(国家資格)を携帯しているか
- 賠償責任保険に加入しているか(推奨)
これらが揃って初めて、型式認証機のメリットを活かした飛行が可能になります。
DJI型式認証ドローンの安全運用ルールと注意点
型式認証機であっても、自由にどこでも飛ばせるわけではありません。安全運用のためのルールを遵守する必要があります。
特定飛行許可承認時の具体的な簡略化内容
型式認証機(第二種)を使用し、二等以上の操縦者技能証明を持つ者が飛行させる場合、カテゴリーII飛行(立入管理措置あり)において、許可・承認申請の一部が不要になります。
ただし、以下の点は免除されませんので注意が必要です。
- 飛行計画の通報:特定飛行を行う際は、事前にDIPS2.0で飛行計画を通報することが義務付けられています。
- 飛行日誌の作成:飛行記録、日常点検記録、点検整備記録の作成と携行が必須です。
許可申請が不要でも、飛行計画の通報と日誌の作成は必須義務です。
飛行日誌の記録方法と様式:効率的な運用のために
特定飛行を行う場合、飛行日誌の記録は法律上の義務です。
- 記録内容:飛行年月日、操縦者名、飛行場所、飛行時間、機体の点検状況など。
- 様式:国土交通省が定める様式、またはそれに準じた形式で記録します。紙媒体だけでなく、アプリやデジタルデータでの管理も認められています。
具体的な様式については公式情報に明記がありませんが、DIPS2.0の機能や、市販の飛行日誌アプリを活用することで効率的に管理できます。
運用の際に注意すべき点(バッテリー管理、機体トラブル時の対応など)
型式認証機は、メーカーが指定した仕様の範囲内で運用されることが前提です。
- バッテリー:必ずメーカー純正の指定バッテリーを使用してください。仕様の異なるバッテリーを使用した場合、認証の対象外となる可能性があります。
- 修理・改造:機体の改造は原則として認められません。故障した場合は、メーカーまたは認定修理業者へ相談してください。
修理内容によっては、再度機体認証が必要になるケースも考えられます。
DJI型式認証ドローンに関するよくある質問Q&A
ここでは、導入を検討している方からよく挙がる疑問について、現時点での情報をもとに解説します。
Q1. バッテリー交換・修理時の扱いは?
A. 公式情報に詳細な明記はありませんが、一般的に型式認証機は「認証を受けた状態」を維持する必要があります。
バッテリーなどの消耗品交換は、メーカー指定の純正品を使用することが基本です。
また、機体の主要部品を交換するような修理を行った場合、機体認証の効力に影響する可能性があるため、修理前に販売店や検査機関へ確認することを強く推奨します。
Q2. 複数台の型式認証機を運用する場合の注意点は?
A. 機体認証は「機体ごと」に行う必要があります。
例えば、型式認証モデルのMini 4 Proを3台購入した場合、3台それぞれについて機体登録と機体認証の申請が必要です。
1台の認証ですべての機体がカバーされるわけではありません。
Q3. 型式認証制度の今後の変更・追加機種の可能性は?
A. 現時点ではMini 4 Pro以外の具体的な追加機種について公式発表はありません。
しかし、ドローン市場の拡大に伴い、産業用機体(DJI Mavic 3 Enterpriseシリーズなど)や他のコンシューマー機へも対応が広がる可能性は十分に考えられます。
今後のDJIおよび国土交通省の発表に注目しましょう。
Q4. 特定飛行以外の一般的な飛行にもメリットはある?
A. 趣味で飛ばす一般的な飛行(カテゴリーI飛行)においては、型式認証の有無による手続き上の大きな違いはありません。
しかし、型式認証機は国が認めた安全基準を満たしているという「信頼性の証」となります。
第三者への説明や、将来的に業務利用へステップアップする際に、その信頼性が役立つでしょう。
まとめ
型式認証制度がドローンユーザーにもたらす恩恵
ドローンの型式認証制度は、空の安全を守りながら、ドローンの社会実装を加速させるための重要な仕組みです。
特に「第二種型式認証」と「国家資格」を組み合わせることで、特定飛行の手続きが簡略化され、業務効率が大幅に向上します。
これは、ドローンをビジネスツールとして活用するユーザーにとって大きな恩恵と言えます。
DJI型式認証ドローンで広がる可能性と今後の展望
DJI Mini 4 Proが型式認証を取得したことは、高性能なドローンをより安心して、スムーズに運用できる環境が整ったことを意味します。
優れたカメラ・ジンバル性能を持つDJI機が、法的な信頼性も兼ね備えたことで、空撮や点検業務での活用はさらに広がるでしょう。
これからドローンを導入する方は、自身の用途に合わせて「型式認証モデル」の選択を検討してみてはいかがでしょうか。


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